オウンドメディアは「広告に頼らない集客基盤」を築ける強力な手段ですが、実際の現場では多くの企業が失敗を経験しています。
代表的なのは、SEOを重視しすぎるあまり本来の目的であるブランディングを達成できていないケース、あるいは自社の想いは語れても集客導線が設計されていないケースです。
これらは特に大手企業や担当者の異動が多い組織にありがちな落とし穴です。
本記事では、PRエージェンシーの視点から、オウンドメディア制作に関する基本的な知識から、メリット、制作の流れ、費用感、注意点までを体系的に解説します。SEO記事とストーリーテリング記事の活用法も交え、実践的な知識を得られる内容になっています。
オウンドメディア制作とは?

オウンドメディア制作とは、自社が主体となって情報発信を行うメディアを立ち上げるプロセスのことです。
単なるホームページや一時的なランディングページ(LP)とは異なり、継続的に記事やコンテンツを蓄積して資産化していくのが特徴です。BtoB向けのオウンドメディアなのか、採用向けのオウンドメディアなのか、目的によって制作方法は大きく異なります。
まずは、その定義と役割からみていきましょう。
オウンドメディアの定義と役割
オウンドメディアは、自社が「コントロールできる」メディアです。
採用ページやプレスリリースは瞬間的な情報発信に強みがありますが、オウンドメディアは長期的な認知獲得・ナーチャリングに力を発揮します。
具体的には以下のような役割を担います。
・潜在層から顕在層までの顧客育成
・SEOを通じた検索流入の獲得
・自社の理念やストーリーの発信によるブランディング
・採用やIRなど周辺領域への波及効果
つまり「単なる宣伝媒体」ではなく、企業成長における戦略的なプラットフォームなのです。
トリプルメディアとは?
オウンドメディアは「トリプルメディア」の一角として位置づけられます。
| 種類 | 代表例 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| オウンドメディア | 自社ブログ、note、特設サイト | コントロール可能、長期的な資産となる | 成果が出るまで時間がかかる |
| ペイドメディア | 広告(リスティング、SNS広告など) | 即効性がある、幅広くリーチ拡大可能 | コストが膨大 |
| アーンドメディア | メディア掲載、口コミ、SNS拡散 | 信頼性・第三者効果がある | コントロールが難しい |
それぞれの詳細や効果的な使い分けは、こちらの記事をご覧ください。
広報PRで必要な3つのメディアとは?〜アーンド・オウンド・ペイドの違いは?
オウンドメディアを制作するメリット

オウンドメディアには短期的な効果だけでなく、企業の中長期的な成長に直結するメリットが数多くあります。
広告に依存しない集客基盤となる
広告だけに頼る場合、費用を止めた瞬間に集客は途絶えます。
オウンドメディアなら、積み上げた記事が長期的に検索流入を生み続け、広告に依存しない安定した集客基盤となります。
また、すぐに購入しない潜在顧客に対してもコンテンツを通じて接点を維持できるため、ナーチャリングに有効です。
ブランディングや採用にも効果的
オウンドメディアは単なる商品紹介の場ではなく、自社の文化や価値観を伝える場です。
社員インタビューや理念紹介などを掲載することで、顧客はもちろん求職者にも魅力を伝えられます。
特に採用においては「どんな人が働いている会社か」が求職者の判断材料となるため、ブランディング効果は大きいのです。
長期的な資産となる
記事やコンテンツは公開直後だけでなく、検索順位が上がれば数年にわたって流入を生み続けます。これは「資産」として企業に残る強みです。
さらに記事が増えることでドメインパワーが強化され、より多くのキーワードで上位表示されやすくなるという好循環が生まれます。
オウンドメディア制作の流れ4ステップ

オウンドメディアを成功させるには、単なる記事執筆ではなく体系的なプロセスが必要です。
①企画設計
最初に行うべきは目的とターゲットの設計です。
「新規リード獲得か」「ブランディングか」「採用支援か」といった目的を定め、ペルソナを明確化します。その上で、SEOやSNS、広告、メルマガをどのように組み合わせて集客するか戦略を描きます。
ここを曖昧にすると、どれだけ記事を積み上げても成果にはつながりません。
②コンテンツ戦略
次に、コンテンツの戦略を練ります。
以下の2種類を明確に区別し、それぞれのバランスや効果的な発信方法、記事内容などを設計していきましょう。
・SEO記事:検索流入を稼ぐための記事で、キーワード選定と検索意図への対応が最重要です。流入の入口をつくることで、集客導線の基盤となります。
・ストーリーテリング記事:導入事例や社内外キーパーソンへのインタビュー、技術解説など、工数をかけてでも読み応えを重視するリッチコンテンツです。感情に訴え、意思決定者の記憶に残すことが狙いです。
シェイプウィンでは両者を組み合わせた記事も作成し、集客導線とブランド強化を両立させています。
さらに、SEOのキーワード対策や検索意図の明確化、SNSでのシェアや広告流入も組み合わせて拡散を狙い、最後に記事構成を練ります。
③制作
オウンドメディアの制作段階では、単に文章を書くことだけでなく、以下のような多角的な表現が求められます。
・ライティング:SEOを意識しつつ、専門性と読みやすさを両立させます。
・インフォグラフィック:数字や調査結果を図解し、直感的に理解できるようにします。
・動画・写真:臨場感を加え、SNS連動時にも効果を発揮します。
・掲載作業:レイアウトやリンク配置を工夫し、読了率や滞在時間を高めます。
文章の質に加え、視覚的・体験的な工夫を取り入れることで、読者の記憶に残りやすいコンテンツになるのです。
④効果測定
制作後の公開はゴールではなく、むしろスタートです。効果測定を行い、得られたデータをもとに改善サイクルを回すことで、初めて成果が積み上がります。
・Google Analytics:流入数や滞在時間、離脱率を把握し、記事ごとのパフォーマンスを数値で確認します。
・Search Console:検索キーワードやクリック率をチェックし、SEO対策の改善点を特定します。
・有料分析ツール(例:Semrush):競合状況やトレンドを分析し、記事テーマやキーワード選定に活かします。
・読者アンケート:数字に表れにくい「共感度」や「理解度」を定性的に把握し、今後の企画に反映します。
成果が見えてきたら、KPIを明確にしておくことも重要です。
どうしてる?オウンドメディアのKPIを徹底解説
オウンドメディア制作にかかる費用
費用感は最初に把握しておくべき重要なポイントです。
| 項目 | 目安費用 |
|---|---|
| 初期制作費用(デザイン、CMS構築) | 100万〜500万円以上 |
| インフラ(サーバー・保守) | 月4〜5万円 |
| SEO分析・改善 | 月20〜60万円 |
| 記事執筆(SEO記事) | 2-5万円/本 |
| 記事執筆(ストーリーテリング記事) | 20-30万円/本 |
| イラスト作成 | 500-5000円/枚 |
| 撮影 | 数万円/回 |
初期制作費用(デザイン・CMS構築)
オウンドメディアを立ち上げる際の初期費用は規模によって大きく変わります。
簡易的なブログサイトであれば100万円程度からスタートできますが、中規模のメディアになると200〜300万円ほどは必要です。さらに大規模なメディアとなると、500万円以上かかるケースも一般的です。
デザインやCMSの構築、セキュリティ対策など、長期運用を見据えた投資が欠かせません。
維持・運用コスト(記事制作・SEO・分析ツール)
立ち上げ後は、継続的な運用コストが発生します。
サーバーや監視などのインフラ費用に加え、SEOの分析・改善や記事制作など、日常的な運営に必要な工数は少なくありません。
SEO記事は比較的低コストで制作できますが、ストーリーテリング記事のように取材や編集に手間をかけるコンテンツはどうしても高額になりがちです。
こうした費用を積み上げていくと、中規模メディアで年間1,000万円前後、大規模になると3,000万円を超えるケースも珍しくありません。
関連記事:オウンドメディアの費用 立ち上げから運用までのかかる費用を解説
内製と外注の違い
一見すると自社で制作すればコストを抑えられるように思えます。
しかし、専任スタッフを雇用する場合の人件費や、ノウハウの蓄積にかかる時間を考慮すると、結果的に制作会社に依頼した方が効率的でコストパフォーマンスも高いケースが多いのです。
外部パートナーを活用することで、最新のSEOやPR戦略を取り入れつつ、スピーディーに成果を出せる点は大きなメリットといえるでしょう。
オウンドメディアのおすすめプラットフォーム
オウンドメディアを立ち上げる際には、どのプラットフォームを選ぶかが成功を大きく左右します。デザイン性や操作性、拡張性、さらにはSEOとの相性など、それぞれに強みと弱みがあります。
ここでは代表的な3つのプラットフォームを紹介します。
①WordPress
世界中で利用されている代表的なCMSで、拡張性が非常に高いのが特徴です。
豊富なプラグインやテーマを活用することで、デザインや機能を自由にカスタマイズでき、SEO対策にも強みがあります。
長期的に本格運用したい企業には最も適した選択肢といえるでしょう。
②note
手軽に始められるプラットフォームとして人気が高いのがnoteです。
特別な知識がなくてもすぐに記事を公開できるほか、既存のユーザーコミュニティとの接点が得られる点もメリットです。
まずは小規模に情報発信をスタートしたい個人事業主や企業におすすめです。
③STUDIO
ノーコードで簡単に構築でき、デザイン性に優れているのがSTUDIOの強みです。
コードを書かなくても洗練されたサイトを作れるため、ブランディングに力を入れたい企業やスタートアップとの相性が良いといえます。
直感的な操作で更新ができる点も魅力です。
オウンドメディアを自社で制作する際の注意点

オウンドメディアは作ればすぐ成果が出るものではなく、実際には継続的な運用があって初めて効果が表れます。
運用を始める前に、下記の注意点をしっかり認識しておきましょう。
時間と手間がかかる
記事執筆から分析、改善まで多くの工数が発生します。専任の担当者を置く必要があるケースも珍しくありません。
特にリソースが限られる中小企業では、この負担が大きな課題になりやすいです。
効果が出るまでに時間がかかる
SEOやコンテンツの蓄積には半年から1年ほどの時間が必要で、短期的な成果は望めません。
そのため経営層や現場の理解を得て、腰を据えて取り組む覚悟が欠かせません。
制作するだけではなく、その後の運用が重要
記事を作るだけでは成果は限定的です。
SEO戦略やSNSとの連動を欠かさず、継続的に改善していく必要があります。運用体制を整えてこそ、コンテンツの価値が最大化されるのです。
オウンドメディア制作後のロードマップは、こちらの記事でより詳しく解説しています。
オウンドメディア立ち上げ完全ガイド 〜失敗しない体制構築と運用戦略〜
AIだけでは効果が出ない
生成AIで記事を量産することは可能ですが、独自性や信頼性を高めるためには人による編集・取材が欠かせません。
特にブランドの世界観や専門性を伝えるには、人間ならではの解釈と表現力が求められます。
制作会社の選び方

このような課題を乗り越えるためにも、信頼できるパートナー選びがオウンドメディアの成功を大きく左右します。
制作会社を選ぶ時に見るべきポイントを4つ紹介します。
①自社と同じ業界の実績があるか
自社に近い業界の知見を持つ制作会社であれば、理解度が高く成果につながりやすいです。
業界特有の課題や商習慣を把握しているかどうかは大きな判断基準となるでしょう。
②SEO対策も行えるか
単なるデザイン制作ではなく、検索流入を意識した設計をしてくれるかは必ず確認すべきポイントです。
SEOの知識が不十分だと、見た目だけのサイトに終わってしまいます。
③PRの観点も備えているか
さらに、集客だけでなく、ブランド強化やメディア露出を見据えた提案ができるかが長期的には非常に重要です。
発信内容をどのように社会的な文脈につなげるかは、PRの視点があるかどうかで大きく変わります。
SEO対策とPRの連携方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。
広報が知っておくべき「SEO×PR戦略」とは?メディア露出への連携方法も解説
④長期的に伴走してくれるか
短期的な立ち上げ支援ではなく、運用フェーズまで一緒に改善していけるかどうかが成功の鍵になります。制作後に相談しやすい関係性を築けるかも見極めが必要です。
まとめ:信頼できるパートナー選びが成功を左右する

オウンドメディア制作は、企業にとって長期的な集客基盤やブランド価値の向上につながる大きな投資です。一方で、初期制作費用や運用コストが想定以上にかかり、継続的な成果を得るためには専任体制が必要になるという現実もあります。
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