広報活動を始めてみたものの、「誰に向けて」「どんなメッセージを」「どの媒体で」伝えるべきかが不明確なまま進めていませんか?
広報には「共感」が不可欠です。そのためには、ペルソナ=理想の受け手像を丁寧に設計することが欠かせません。ペルソナ設定があれば、情報発信の軸が定まり、SNS、PR、メディア対応の一貫性が高まります。
本記事では、広報におけるペルソナの意味やターゲットとの違い、具体的な設定方法、活用事例までを網羅的に解説します。
ペルソナとは?

広報活動の成功には「誰に何を伝えるか」という軸が欠かせません。その出発点となるのが「ペルソナ」の設計です。
まずは、ペルソナの定義やターゲットとの違いについて整理します。
「ペルソナ」の定義
ペルソナとは、製品やサービスの理想的なユーザー像を具体的に描いた架空の人物像です。
名前や年齢、職業、家族構成といった基本情報から、価値観、悩み、ライフスタイル、情報収集の行動までを詳細に設定します。
ペルソナを明確にすることで、情報発信の一貫性と共感性が高まり、企業の広報活動がより的確にターゲットに届くようになります。
「ターゲット」との違い
ターゲットは「30代男性・営業職」といった属性に基づいた大まかな層を指すのに対し、ペルソナは「佐藤健一さん(38歳)・IT企業の営業マネージャー・都内在住・働きながら育児にも奮闘中」といったように、1人の人物像を緻密に設計します。
ターゲットが方向性を示す地図だとすれば、ペルソナはその中を具体的に歩くキャラクターです。広報においては、この具体性が「伝え方」に直結します。
広報活動にペルソナ設定が不可欠な5つの理由

広報の成果を最大化するためには、社内外に共通の「伝える軸」が必要ですが、それを形作る上で重要なのがペルソナ設定です。
ここでは、ペルソナがなぜ広報に不可欠なのか、5つの視点から解説します。
①広報活動の精度が向上する
ペルソナが明確になることで、広報活動の的が定まります。
たとえば、ペルソナが日頃から読むメディアが判明すれば、的確なメディアリストが作成でき、アプローチの無駄が減ります。
また、その人の悩みに直結する企画を設計すれば、媒体への掲載率も高まりやすくなります。情報の発信先も発信内容も、精度が一気に高まるのです。
②企業メッセージに一貫性が出る
企業が発信するメッセージが媒体やコンテンツごとにバラついてしまうと、ブランドへの信頼を獲得するのが難しくなります。
ペルソナがあることで、誰に向けての情報かが明確になり、メッセージのトーンや方向性が自然と揃います。
広報文書、SNS、IR資料など、全社的な情報発信の一貫性を保つうえでも役立ちます。
③広報施策の一貫性がもてる
メディアアプローチ、SNS投稿、オウンドメディア記事、広告、展示会出展など、広報活動は多岐にわたります。
ペルソナを設計することで、それらが「誰に届けるための施策なのか」が明確になり、戦略的な連動が図れます。
結果として、単発で終わる施策ではなく、相互に補完し合う施策群として展開できます。
④チームで共通認識を持ちやすくなる
広報活動は往々にしてチームで行います。
特に社内広報・外注ライター・デザイナーなど多様なメンバーと連携する場合、共通の前提がないと方向性のズレが起きがちです。
ペルソナを共有することで、「この人に向けて伝えるんだ」という視点が一致し、スムーズな制作進行が可能になります。
⑤刺さりやすい・バズりやすい企画が生まれる
誰に向けたコンテンツかわからない記事や投稿は、共感されにくく、結果としてシェアもされません。
一方で、ペルソナを起点にした企画は「自分のことだ」と感じさせる強力な武器になります。実際に、ターゲットの感情や課題を言語化した投稿がX(旧Twitter)やInstagramで高い反応を得た事例も多くあります。
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広報用ペルソナの作り方4ステップ

では、どのようにしてペルソナを設計すればよいのでしょうか。広報活動に使える実践的なペルソナ作成のステップを、4段階で解説します。
①調査
まずは情報収集から始めましょう。
既存の顧客アンケート、SNSでのエンゲージメント傾向、営業やカスタマーサクセスへのヒアリングなど、現場からの一次情報が有効です。
社内に蓄積されたナレッジやCRMデータも活用しながら、対象となる人物の特徴を洗い出します。
②データのグルーピング
集めた情報を「デモグラフィック」と「サイコグラフィック」に分けて整理します。
・デモグラフィック情報:年齢、性別、職業、地域、家族構成など
・サイコグラフィック情報:価値観、購買動機、行動パターン、情報収集経路
この2軸で整理することで、単なる属性ではなく、行動や思考の傾向まで含めた設計が可能になります。
③人物像の作成
上記をもとに、ペルソナを具体的な人物として描きます。
名前、見た目のイメージ、1日のスケジュール、悩み、成功体験、日常の情報収集方法などを記述しましょう。
また、複数パターンのペルソナを作ることで、多角的な施策設計が可能になります。
④社内での再確認
完成したペルソナは、チームや関係者で共有し、認識のズレがないかを確認します。
特に営業やカスタマー対応チームなど、顧客接点のある部門とのすり合わせは重要です。
仮説ベースで設計した場合も、共有とフィードバックを経て改善を重ねましょう。
企業のペルソナ活用の成功事例

ここでは実際にペルソナを活用し、成果を上げた企業の事例を紹介します。
記事の質が安定し流入増!オウンドメディア改善事例
シェイプウィンが支援したある企業では、オウンドメディアの記事制作時にペルソナ設定が曖昧だったため、記事のトーンや内容に一貫性がなく、頻繁に修正が発生していました。
そこで、各記事ごとに「誰に向けた内容か」を明確化し、ペルソナ設計を全記事の起点とするよう運用を変更しました。
その結果、執筆から公開までのプロセスがスムーズになり、読者の滞在時間やクリック率も向上。リライト作業も激減し、制作コストと時間の削減にもつながりました。
狙うべき媒体が明確に!メディアリレーション成功事例
メディアリレーションに課題を抱えていた企業では、アプローチ設計の起点としてペルソナを明確化しました。
具体的には、経営層、実務担当者、技術部門など、複数の受け手を想定し、それぞれに合わせたメディアリストを作成。経営層には業界紙やビジネスメディア、現場担当には専門誌や業界系Webメディアなど、ペルソナごとに適切な媒体を選定しました。
このプロセスによって、狙うべき媒体の選定基準が明確になり、メディア研究も深まりました。
結果として、各媒体の編集方針や読者ニーズに即したコンテンツ設計ができるようになり、取材依頼もスムーズになった結果、メディア露出の量と質が共に向上しました。
関連記事:メディアリレーションズとは?広報担当者のための用語解説
ペルソナ設計でよくある疑問

ここでは、国内外のスタートアップ企業から大企業まで200社を超えるクライアントを直接支援してきたシェイプウィンが、広報担当者からペルソナに関して日々よく受ける質問に対して回答します。
ペルソナは1つのみの方がよいですか?
複数設定するのが基本です。
ペルソナは1つに絞るべきという考え方もありますが、現代の多様化した市場では、複数のペルソナを設計する方が現実的かつ効果的です。実際の顧客層は一様ではなく、ニーズや関心、行動パターンも異なります。複数のペルソナを想定することで、より細やかで的確な訴求が可能となり、各ターゲットに最適化されたPR戦略を展開できます。重要なのは、それぞれのペルソナに対して一貫性のあるブランド体験を提供すること。多層的な戦略が、ブランドの価値を最大化します。
ペルソナは一度作ったら変更しない方がよいですか?
ペルソナは「仮説→運用→検証→改善」のサイクルで更新していくのが理想です。
市場やユーザーの行動は常に変化しているため、年に1回は見直す機会を持つことをおすすめします。
ペルソナは想像だけで作ってもいいの?
実際に存在する人を照らし合わせるとより効果的です。
ペルソナ設計は想像や仮説から始めても構いませんが、それだけでは現場とのズレが生じるリスクがあります。実際の顧客像と照らし合わせることで、よりリアルな課題や欲求が見えてきます。数字や発言、行動パターンといった定性的・定量的な情報を積み重ねながら、仮説を検証・更新していくプロセスが、共感されるPRやマーケティングの土台となります。
ペルソナを効果的に社内共有する方法は?
ペルソナを文書化し、営業や開発、カスタマーサポートなど部署を越えて共有可能なドキュメントとして管理しましょう。
加えて、チームルームの壁や社内ポータルにペルソナごとのビジュアル資料を掲示するなど、視覚的に印象づける仕掛けも有効です。定例ミーティングで活用事例を共有するなど、実務と結びつけることで理解が深まり、顧客起点の行動につながります。ペルソナは「使われてこそ価値がある」ことを意識しましょう。
まとめ:ペルソナは企業ブランドを正しく伝える土台

広報活動におけるペルソナ設計は、単なる「届ける相手の設定」ではなく、企業のブランドを正しく伝えるための戦略的な土台です。
メディア選定、コンテンツ設計、発信のトーンまで、全ての意思決定がペルソナに根ざしているといっても過言ではありません。
一方で、ペルソナ設計は時間も工数もかかる作業であり、マーケティング、SNS、SEOといった他領域とも密接に関わります。限られたリソースの中で、これら全てを網羅的に実行するのは現実的に難しいかもしれません。
だからこそ、広報とマーケティングを一気通貫で支援できるパートナーの存在が重要です。
シェイプウィンでは、ペルソナ設計をはじめ、PR・マーケティング施策を一貫してサポートしています。まずはお気軽にご相談ください。