近年、BtoB領域でも「ファンづくり」がマーケティング戦略として注目されています。
競合サービスが増え、価格や機能だけでは差別化しづらくなったいま、製品やサービスのコモディティ化が進み、消費者は「どれでもよい」と判断しやすくなっているためです。
選択肢が溢れる現代では、合理的な比較ではなく、「共感」「世界観」「体験」といった価値こそがブランドを選ぶ決め手になります。だからこそ、顧客が思わず語りたくなるような体験を設計し、継続的な関係を構築する「ファンづくり」は、企業の成長を左右する重要な戦略になっているのです。
本記事では、ファンづくりの意味から実践方法、成功事例、よくある落とし穴までを体系的に整理します。これからファン戦略に取り組みたいマーケティング担当者に向けて、実務で役立つ内容をわかりやすく解説していきます。
はじめに:なぜ今「ファンづくり」が重要なのか

製品やサービスの価格や品質が横並びになり、選択肢の比較もしやすくなった現代では、企業は合理的な理由以外の「選ばれる理由」を明確にしなければ生き残れません。
たとえば、ユニクロがリーズナブルで高品質な服を提供していてもハイブランドが支持されるのは、そのブランドの世界観に顧客が価値を感じているためです。同様に、LCCが一般的になった今でもビジネスクラスを選ぶ人がいるのは、「ワンランク上のサービスを受けて快適に移動したい」という体験を重視するからです。
iPhoneが強い理由も同じ構造です。性能ではAndroidが勝る場面も多いにも関わらず、iPhoneが支持されるのは、デザイン性やブランド哲学、Appleストアでの体験を含む「世界観」への共感があるからです。ファンは合理性ではなく、「好きだから」選びます。これこそが、企業が「ファンづくり」に取り組むべき本質です。
「ファンづくり」は、愛着や継続利用を促す関係性を築くことであり、企業に長期的な利益をもたらします。
さらに、多くのファンはSNSで企業の代わりにブランドの知名度や影響力を広げます。
だからこそファンづくりは、単なるマーケティング施策ではなく、事業全体の成長を左右する戦略と言えるのです。
ファンづくりとは?ファン化の基本概念

ファン化とは何か、どんなメリットがあるかを理解することで、ファンづくりが単なるトレンドではなくマーケティング施策である理由がわかるでしょう。
まずは、そもそも「ファン化」とは何かをみていきます。
ファン化とは何か?
「ファン化」とは、顧客がブランドに対して共感・信頼・愛着を持ち、継続して行動してくれる状態を指します。
ファンは「特別な体験」を積み重ねることから生まれます。
たとえば、小売店でコンシェルジュに「あなたのライフスタイルなら、このモデルのほうが向いてます」と提案されたとき、顧客は「自分のための体験を提供してくれた」と感じ、そのブランドに自分だけのストーリーを見出します。
また、企業が定期的に「ギブ(価値提供)」を続けることも重要です。メルマガでの視点提供、購入後のフォローアップ、世界観を伝えるSNS発信など、ブランドに触れるたびに「面白い」「学びがある」という感覚が得られると、顧客は自然とファンへと近づきます。
ビジネスにおけるファン化のメリット
ファン化がビジネスにもたらすメリットは極めて大きく、短期的な売上だけでなく企業の長期的な利益に直結します。
第一に、LTV(顧客生涯価値)の向上です。
ファンは新しい情報に敏感で、製品のアップデートや新サービスにも継続して反応してくれるため、再購入や継続利用につながりやすくなります。
第二に、口コミ・紹介が増える点です。
ファンは自発的にSNSや日常生活でブランドを紹介してくれるため、広告では届きにくい層にも口コミが広がり、新規顧客獲得のコストを抑える効果があります。
さらに重要なのが、危機管理における効果です。
たとえば、Appleの新型iPad Proのプロモーション動画が炎上した際には、根強いファンが擁護する声が多く、「Appleなら大丈夫」というも期待ネット上に広がりました。
ファンはブランドを自分ごととして捉えているため、ネガティブな情報に対してもポジティブな認知バイアスが働きやすいのです。
ファンの存在は、企業の資産そのものです。
ファンづくりに有効的なPR手法5選
PR視点でファン戦略を設計すると、広告では実現できない熱量を生み出しやすくなります。
ここでは、効果が高い施策を5つ紹介します。
①SNSとメディア露出の連動

SNS投稿とメディア露出を連動させることで、ファンが「反応したくなる瞬間」を意図的に作ることができます。
たとえば、メディアでの記事公開に合わせてSNSにその裏側のストーリーを投稿すると、ファンは能動的にUGC(投稿)を生み出しやすくなります。
キャンペーン型の広報施策も熱量を可視化し、中長期のファン形成につながります。
関連記事:SNS広報の活用法:知っておきたい賢いSNS広報戦略
②オウンドメディアでの継続的な関係性づくり

単発の情報発信ではファンは育ちません。オウンドメディアの連載や企画・テーマなどを工夫し、ファンといかに接点を継続させ続けるかが重要です。
継続的な発信が難しい場合でも、PR会社に編集・執筆・発信をサポートしてもらうことで、ブランドの世界観を統一した発信が可能となり、ファンの熱量を維持することができます。
③インフルエンサーではなく「ブランドアンバサダー」の育成

単発でPRを依頼する依頼するインフルエンサーではなく、ブランド理念に深く共感した顧客や社員などを「アンバサダー」として育成する施策も有効です。
短期的な広告ではなく、中長期的にアンバサダーが発信し続けることで、ファンの共感を生むことができます。
さらに、アンバサダーは「自分の価値を高めてくれる活動」としてブランド発信に関わるため、自然かつ継続的なUGCが生まれやすくなります。企業側も彼らの声を商品改善やサービス開発に活用でき、双方にとってメリットのある関係を築くことができます。
④ファンとのイベント開催

リアル・オンラインを問わず、双方向コミュニケーションが生まれるイベントはファン化の重要施策です。参加者同士が交流することでコミュニティが強化され、共感も生みやすくなります。
さらに、イベントはブランドの世界観を深く体験できる機会でもあり、商品やサービスの背景にあるストーリーを直接伝えられる点も大きなメリットです。参加後にSNS投稿や口コミが増えやすく、PR効果も波及します。
⑤社内広報との連携

従業員は、自社の第一のファンです。アパレルスタッフが自社ブランドの服を購入するように、従業員がブランドのファンになることではじめて、顧客に対しても魅力を伝えられるようになります。
また、従業員がブランドストーリーの語り手となることで、社外向け発信の説得力は大きく高まります。採用・パートナー獲得・顧客ロイヤルティ向上など、企業活動全体への良い影響も期待できるでしょう。
そのためには、社内広報と連携し、従業員自身がブランドに誇りを持てる状態をつくることが欠かせません。社内からファンを育てる仕組みこそ、社外の人をファン化するための土台となります。
関連記事:社内広報と社外広報の違いとは? 広報PR初心者の業務解説
ファンづくりを実践する4つのステップ

ファン化は感覚的な取り組みではなく、体系化されたプロセスで実行すべきマーケティング施策です。
4つのステップに分けて、その方法を解説します。
ステップ1:ターゲットとなる「ファン候補」を定義する
すべての顧客をファンにする必要はありません。まずは「熱量が高くなる可能性がある層」を特定します。
たとえばBtoBであれば、
・サービス導入に積極的な担当者
・業界の知見を獲得したい層
・課題感が強く、情報収集に熱心な層
などが該当します。
この段階でペルソナを明確にしておくことで、次のステップでの発信内容、イベント設計、コミュニティづくりの精度が大きく変わります。
ステップ2:ファンとの接点・交流を設計する
SNS施策やオフラインのイベントを組み合わせ、ファン化を狙う顧客との接点を設計しましょう。
顧客の熱量は「体験の質」で決まります。
たとえば、空港で「ワインとソフトドリンクしかないと思っていたらビールも選べた」などの思ってもいなかった嬉しい体験は、顧客にとって「誰かに話したくなる話」になります。人は自分だけが得した体験をシェアしたくなる性質があり、これがファン化を加速させるのです。
「自分だけの特別な体験」により、SNS投稿や口コミも自然と発生しやすくなります。
ステップ3:ファンを維持・活性化する仕組みを作る
ファンの維持には、「好奇心や成長欲求をくすぐる体験」を継続的に届ける必要があります。
顧客はブランドに「感情面の報酬」を求めています。メールマーケティング、会員向けコンテンツ、アップデート情報など、あらゆる接点で「ギブ」が続くと、顧客は長期的なファンになりやすくなります。
また、航空会社のマイル制度や飲食店のランク制度のように、レベルアップする体験を設計すると、ファンは継続的にブランドに関与したくなります。
ステップ4:効果測定
ファン化の程度は感覚的に判断してはいけません。
以下のような定量指標を定めて定期的に計測し、施策の改善に活かすことが重要です。
・VOC(Voice of Customer、顧客の声)分析
・NPS(Net Promoter Score、推奨度)
・継続率
・UGC数
・イベント参加率
よくある落とし穴・注意点

ファンづくりはメリットが大きい反面、間違ったアプローチは逆効果になる可能性があります。
特に注意するべき3つのポイントを解説します。
①新規ファンと既存ファンの違いに注意する
既存ファンだけを優遇しすぎると、新規顧客が参加しづらくなり、逆にファン層が縮小するケースがあります。一方で、誰でも歓迎してしまうと既存ファンの熱量が下がります。適切なバランス設計が必要です。
コミュニティ運営では「初心者向け」「コアファン向け」の二層設計が有効で、それぞれがストレスなく参加できる環境づくりが重要になります。
新規ファンが入りやすい導線と、既存ファンの特別感を両立させることが、持続的なファン形成のポイントです。
②KPI・測定指標を曖昧にしない
ファンが「なんとなく盛り上がっているだけ」ではビジネスの成果に還元できません。
エンゲージメント、CV、LTVなどの具体的な指標を追うことで、ファン施策が事業成長に寄与します。
さらに、定量指標に加えて、VOC(顧客の声)の質的分析を組み合わせることで、熱量の理由や改善余地が明確になります。
定期的な振り返りと改善サイクルを回すことで、ファン施策の投資対効果も最大化できるでしょう。
③時間がかかることを理解しておく
ファンづくりは短期施策ではありません。
人の熱量は「積み重ね」からしか生まれないため、最低でも半年〜1年以上の視点が必要です。短期で成果を求めすぎると、場当たり的な施策になり、かえって熱量を損なう可能性があります。
小さな成功を積み重ねることがファン獲得の本質であり、継続こそがブランドの信頼を育てる最も確実なアプローチです。
成功事例から学ぶ「ファンづくり」

ファンづくりは業界や商材によって形が異なりますが、根底にある共通点は「顧客が自ら参加したくなる仕組み」をつくることです。
ここでは、BtoCとBtoBの両領域で成果を上げている事例を紹介しながら、ファン化がどのように事業成長へつながっているのかを紐解きます。
航空会社のマイル制度
マイル制度は最も有名なファン化施策の一つです。
利用すればするほど得をする「階段設計」により、顧客は自然とロイヤルティを高めます。
さらに、ステータスごとに専用ラウンジや優先搭乗など「特別扱いされる体験」が付与されることで、心理的な報酬が強化され、ブランドへの没入度も高まります。
ユーザー自身が体験を語りたくなるため、自然と口コミや紹介が生まれるのも特徴です。
塚田農場
塚田農場は、来店回数に応じて「名刺」の肩書きが変化する独自制度を導入し、ファンが自発的にSNSで発信したくなる仕掛けを生み出しました。
来店するほど楽しみが増すこのような設計は、飲食業界におけるファンづくりの成功例として、今でも多くの企業が参考にしています。
Microsoft
ファン作りは、C向けだけとは限りません。Microsoftは、B向けのパートナー企業に対してもファン作りの取り組みを行っており、表彰制度や発表会を導入しています。
パートナー企業の成功事例が公式に紹介されることで「自社ももっと活用したい」というモチベーションが高まり、コミュニティ全体で製品活用が進む場となっています。
信頼関係を軸にしたコミュニティ設計は、BtoBマーケティングにおいて非常に再現性の高い手法といえるでしょう。
食品・飲料業界のファンコミュニティ
カゴメの「&KAGOME」のように、食品・飲料業界では「参加型コミュニティ」がファンづくりの成功パターンとして定着しています。
レシピ投稿や商品アイデアの提案など、ユーザーが参加できる仕組みをつくることで、顧客は「自分もブランドの一員だ」という当事者意識を持つようになります。
特に、ユーザーの意見やアイデアが公式コンテンツや製品改善に反映されると、ファンの熱量は継続的に高まります。これは、生活者の声を直接商品開発に活かせる企業側にとってもメリットで、マーケティングと開発が自然に連携するサイクルを生み出します。
こうした双方向のコミュニケーションこそが、食品・飲料業界におけるファンコミュニティの強さといえるでしょう。
アウトドアブランドのキャンプイベント
スノーピークは、ファンイベントを通じてブランドと顧客、そして顧客同士がつながる場を提供しています。キャンプイベントのような思い出に残る体験は、ファンの熱量を大きく高める要因となります。
さらに、参加者のSNS投稿が連鎖的に広がることで、広告に頼らずに認知が拡大し、新規顧客も自然と増えていきます。このような体験を中心とした施策は、アウトドアブランドならではのファンづくり施策でしょう。
よくある質問

最後に、シェイプウィンが広告・PR支援を行う中で、企業のファンづくりについてよく寄せられる質問をまとめました。
ファンができる人の特徴は?
企業・個人を問わず、ファンがつく人にはいくつか共通点があります。
まず、価値観が明確で「何を大切にしているのか」が一貫しており、その芯の強さが周囲に安心感を与えます。また、相手に価値を届けようとするギブ精神が強く、その姿勢が自然と人を惹きつけます。
さらに、日常的に発信を続け、自分の世界観を言語化することで、周囲から共感を得やすくなります。
この 「世界観」「ギブの精神」「発信」 が組み合わさることで、継続的に人からの共感を生み、ファン化が加速していくのです。
ビジネスにおけるファン化とは?
ビジネスにおけるファン化とは、顧客が「このブランドでなければだめだ」と感じる状態をつくるため、継続的な関係性を強化する経営施策です。
単に商品を購入する顧客を増やすのではなく、価値観やストーリーに共感し、積極的にブランドに関与してくれる存在を育てることを指します。
ファン化した顧客はLTVが高く、口コミ・紹介・擁護行動を通じてブランドの成長を後押ししてくれる点が非常に大きな特徴です。
ファンを作るマーケティングとは?
ファンを作るマーケティングとは、顧客体験の設計、コミュニティ形成、PR、SNS発信などを組み合わせ、ブランドへの共感と熱量を高める戦略です。
単発の施策ではなく、長期的に一貫した価値と世界観を顧客に提供し続けることで、「選ばれる理由」を論理ではなく感情のレベルで醸成していきます。また、顧客を受け身の存在にするのではなく、共創パートナーとして巻き込むことで、自然とUGCや口コミが生まれ、ファンの母数が増えていく循環が生まれます。
まとめ:ファンづくりをブランド成長の軸に

ファンづくりは、選択肢が溢れる現代においてブランドが「選ばれ続ける」ための最も重要な戦略の一つです。共感・物語・体験といった価値が顧客のロイヤルティを生み、長期的な売上や口コミ、危機管理の強さにもつながります。
一方で、ファン化には継続的な接点づくりやコミュニティ運営、コンテンツ制作など多面的な取り組みが必要です。
また、SNS、オウンドメディア、PR、イベント、社内広報など、複数のチャネルを横断的に連携させることが重要ですが、社内だけでこれらをすべて網羅するのは簡単ではありません。
だからこそ、戦略の舵取りや実行支援を担う外部パートナーの存在が重要になります。
シェイプウィンでは、PR・SNS・SEO・コンテンツ制作を総合的に組み合わせ、企業ごとに最適なファンづくりの体制を設計しています。
まずはお気軽にご相談いただき、自社の強みを活かしたファン戦略を一緒に描いていきましょう。
