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【書評】コンテンツ・マーケティング64の法則:売りにつながるオンライン記事の書き方(著者:アン・ハンドリー/ダイレクト出版)

デジタル社会の今日、なにかを書くということが日常的なことで、むしろ重要度を増していることにきっとだれでもが気がついているはずです。

基本的な書く力=文章力だけでなく、SEOに効果的な書き方、アフィリエイトで儲けるため、ブログでアクセス数を増やすため、SNSで「いいね」を獲得するためのテクニックなどさまざまなWebライティング、PR関係者であればニュースリリースやニュースレター、メールマガジンをメディアで取り上げてもらうための文章術など、書店にはあらゆる書き方のノウハウ本で溢れかえっています。

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インプットの重要性はだれもが理解していますが、それ以上にアウトプットが不可欠な社会で私たちは生活しています。しかし、アウトプットはインプットに比べると時間がかかり、そのための努力も続けなければならないことも認識されています。

著者も、以下のように述べています。

“ライティングを通してうまく伝える能力は、あればいいというだけでなく、必要なものである。そして、見過ごされていることが多いものの、ほとんどすべての“コンテンツ・マーケティングの基本”でもある。”

私は、文章術の本を読んだことはないのですが、本書だけはぜひとも読みたいと以前から思っていました。

それというのも、2018年1月に書評でも紹介した『サブスクリプション・マーケティング〜モノが売れない時代の顧客との関わり方』の著者が、このアン・ハンドリーの本を“マーケティングのための、楽しくて、親しみのもてる文章の書き方を学ぶことができる。書くのはお手のものという人にとっても得るところの多い本だろう。”と、とてもほめていたからなのです。

出版社直販だけで一般書店売りはしていない著書なので、目に触れる機会が少ないものです。

本書の帯には、『マーケティングとPRの実践ネット戦略』『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』の著書として著名なデビッド・マーマン・スコットの推薦文があり、それも本書の購入をうながしました。

また、私の文章スタイルはまったくの我流なので、きちんとしたライティングについて知り学ぶにはとても良い機会であり、きっと気づきや示唆があるに違いないという判断もありました。

著書のアン・ハンドリーについて

PCで仕事している女性

本書の原題は、“Everybody Write:Your Go-To Guide To Creating Ridiculously Good Content”(原著:2014年)です。

著書のアン・ハンドリーは、20年以上にわたりマーケターの文章を編集してきたキャリアの持ち主で、コンテンツ制作や管理のプロフェッショナルとして“MarketingProfs”ーーマーケティング専門家によるネットワーク組織で、企業や起業家にマーケティング戦略についてのさまざまなサービスを提供するーーのCCO(Chief Content Officer:最高コンテンツ責任者)、LinkedIn「インフルエンサープログラム」メンバーなどを務めるほかに、講演や執筆からマーケターやコンテンツクリエイターの人材育成や研修などの活動を行っている人です。

ほかに共著として『お客が集まるオンライン・コンテンツの作り方〜ニッチ市場を制するためのブログとソーシャルメディアの使い方』(原著:2012年)があります。

かつて、文章を書くのは限られた人でした。著者は、今日を“この世界は誰でもが出版社になれる惑星”と表現し、本書の執筆動機について以下のように述べています。

“自分が欲しいと思う種類の本を見つけられなかったからです。つまり、書き方のガイドでもあり、コンテンツ・マーケティングの優れたスポーツマンシップについてのルールブックでもあり、ブランドを代表してコンテンツ製作や管理をする人すべてのための、オールラウンドで信頼できるデスク上の友にもなる本だ。”

本書の構成とその概要

こうした種類の本を紹介するのは、実はとても難しいと感じています。それというのも、読む人のライティングスキルや書き方、本書の内容についての関心がまさに十人十色だからです。

本書は、全5部、64法則(章)で構成されています(約300ページ強)。

Part1「ライティング法則」(1〜30)

64の法則のうちおよそ半分の30(約130ページ)の法則が、文章を書くことに費やされています。ライティングというのはアートではなく習慣で、筋肉を鍛えるようにそれ自体を習慣化することだというのが著者の考え方です。それには、走り書き(メモ)や箇条書きなどでもかまわず、たくさん書くことより短くても書く回数を増やすことだと。

著者が「ライティングGPS」と呼んでいる「プロセス〜目的地にたどり着くための12のガイド」(法則6)は、長い文章を書けるようになるための12のステップを紹介していますが、これから文章を書く人たちには大きな指針となります。そして、とにかく書く場合、なぐり書きでもなんでもいいから言葉を吐き出すことだと提唱しています。この12のプロセスはひとつの提案なので、試行錯誤しながらも書き手自身が好きな順番でかまわないと。

また、「仲間作り〜ひとりより相棒がいたほうがいい」(法則21)は、私の経験からもっとも共感したことで、それについてブログを書いたことがあります。現在の私のブログスタイルは、同じ志向性(志と試み)をもつその友人がいたからこそなのです。

Part2「ストーリーの法則」(31〜34)

作家の言葉を引用しながら「自らを語る」(法則32)が示唆的です。世の中には、ほかにも多くの優れた書き手、賢い書き手が大勢いるでしょうが、それでもあなたはひとりしかいないと。

また「独自の視点 独自の声」(法則33)では「あなたらしい独自の視点と声」が「コミュニケーションすべてで差別化を図るための中心要素」という著書の主張には、それを常に心がけてきた私は勇気づけられた思いです。

Part3「出版の法則」(法則35〜49)

フェイクニュースやステルスマーケティングが横行する今日、とても重要です。

著者は、“ブランド・ジャーナリズムは中立的な立場をとるわけではないものの、ジャーナリズムの一種”と考えています。つまり、それは事実を扱い、真実の物語をうまく語るという視点であり、読者に対して常に正直で信頼される内容を提供しなければならないと主張しています。

このパートでは、「インタビュー〜聞く技術を磨くためのテクニック」(法則40)、「裏づけ〜信頼性を出版の要とするために」(法則41)、「キュレーション〜特別な価値を付け加えたオリジナルとして提供する」なども、大いに有益です。

新聞紙とコーヒーとメガネ

Part4「コンテンツの法則」(50〜64)

「長さのガイドライン〜検索エンジンが好む長さとは」(法則50)において、ブログ、メール、facebookなど代表的なコンテンツの調査結果について述べています。これによると、ブログでは1,500ワードだとのことです。

ほとんどその文字数で、私自身は書いたことはありませんが、一番悩むのは書き出しの140字です。これはやはりtwitterの影響が大きいですし、ほかのソーシャルメディアでもリード部分(冒頭の数十字から数百字)が表示されるからです。

著者も、“優れたリードは文章のトーンを定め、読者の心をつかんでもっと知りたいと思わせる”(法則16)とも述べています。

「見出し〜大げさな見出しは、オーディエンスをミスリードする」(法則59)は、常に心にとどめておきたい覚悟です。

“目を引きつけて離さない、奇妙で好奇心をそそる見出し”で、アクセス数を増やしたいという誘惑は避けがたいものです。しかし、ニュースやキュレーションサイトでもないかぎり、そうした誘惑に勝たねばならないといましめ強く釘を刺しています。企業のコンテンツ・マーケティング担当者であれば、なおさらのことだと。このアドバイス(矜恃ある決意)は、とても重要で示唆に満ちています。

書き出しで、「読んでみたい」と思ってもらえるにはどうしたらよいかは大きな課題です。私の書くものは、マーケティングエッセイだろうが書評エッセイにかかわらず、基本的に分量が多く、しかも読んでくださる方々に問いかける(考えてもらえる)ような記事になればということを念頭においていますので、書き出しだけで読んでみたいと感じてもらえる動機付けができないと難しいだろうと判断しています。

自分で書きたいと思うことより、私だったらこういう内容であれば読んでみたいと思うような記事とするように心がけているつもりです。

ただし、上記1,500ワードという<魔法の数字>にするために、書き手は無理する必要性はまったくないことに注意をうながしています。

このパートでは、ほかにもTwitter(法則51)、ハッシュタグ(法則52)、Pinterest(法則53)、Facebook(法則54)、LinkedIn(法則56)、ブログ(法則63)など各ソーシャルメディアでの文章作法、またランディングページ(法則58)、ホームページ(法則60)、企業情報(法則61)、インフォグラフィック(法則62)にいたるまで、それぞれどういう書き方や文章が最適なのか有益さのつまったアドバイスが続きます。

最後は、1年を振り返るための年次報告書の書き方(法則64)まで、とても参考になる結びへ続きます。

Part5「コンテンツ・ツール」

著者自身が利用しているだけではなく、友人やマーケター、本の著者などにアンケートを求めて得た情報とのことです。

テキストエディタやエバーノートのように日常的に利用しているツールから、画像や写真データベースまで、ライティングだけではなくより広くコンテンツ作成ツールとして紹介しています。

64の法則より覚えておくべき「3つの心得」

スマホを見ながらメモをする

本書は、たんなる文章の書き方だけではなく、書くための姿勢(心構え)、コンテンツ・マーケティング、さらにはインタビューからブランド・ジャーナリズム、著作権やキュレーション、ランディングページ、データベースから出版の問題、ソーシャルメディア(ブログやSNSなど)活用での留意点までまさに至れり尽くせりの内容で、書く=表現するというあらゆることに関連したテーマを網羅していることが特長です。

そうした多彩なテーマを扱うなかで、基本となるすぐれた文章を書くためには大きく3つの姿勢が重要だと語ります。それは次の3点です。

(1)書くことを習慣化すること
(2)基本的な法則を知ること
(3)なにごとにも好奇心(興味)を持つこと

(1)はメモ(走り書き)、箇条書きなど、とにかく書くという行為を日常的に行うことがもっとも重要であること。PCでキーボードを打つ、スマートフォンでフリック入力することがほとんどな社会では、筆記具を使って手を動かして文字を書く、しかも漢字を思い出す必要もあり、手書きという行為は今日ではとても煩雑に感じられます。

(2)は、本書の中心テーマです。ほかの仕事などと同様、文章を書けるというのは才能でなく鍛えたスキルとして身につけることができます。文章作成(書き方)における癖というのは、長年にわたり書いていると簡単には矯正できません。ですから、表現することになれていない人たちのほうが、癖のない時期にこうした教えや方法論を身につけておくことが大切です。

コンテンツ・マーケティングという言葉自体、最近でこそビジネス用語としてだけではなくインバウンドマーケティングとともに頻繁に語られ、その重要性はPR関係者であれば認識しているでしょう。

しかし、それが実際にどのようなもので画像や映像(インスタグラム、ユーチューブ、Vロガーなど)中心となっている今日、それでもやはり言葉による伝達コミュニケーションとしてもっとも頻繁に利用される表現=書くことがどのようなものなのか、その意義と価値を理解している人となると、おそらくは多くはないでしょう。

(3)は心のあり方ですが、好奇心があれば書きたいたいことはいくらでも見つかると語ります。私が11年前にブログをはじめたころを思い起こせば、もっとも実感することです。もっと言うならば、それはある意味ではその人の生きる姿勢ともいえます。人は仕事や環境に慣れ、年齢を重ねると同時に好奇心を徐々に失う傾向があります。好奇心こそ、独自性、洞察力と並んで私がもっとも大切にしていることです。

本書を活かすための読み方

分厚いテキストで勉強する男性

本書は最初から最後まで読むよりも、書くときに悩んだり迷ったりしたとき繰り返し繙いて事典のように活用したい本です。

書くということに慣れていない人であれば、もちろん通読するよう強くおすすめします。これから文章を書きはじめる初心者や中級者はもとより、書くことを職業にしているプロのライター、編集者などにもヒントや気づきが詰まっています。

さらに、コンテンツ部門など自分では文章を直接書かずとも、マネジメントや制作の運営や管理するような立場の人には、Part3「出版の法則」(35〜49)とPart4「コンテンツの法則」(50〜64)が大いに役立つでしょう。

著者が「オールラウンドで信頼できるデスク上の友にもなる本」と語るように、本書にはたくさんの処方箋が書かれています。

本書は、直販のため一般書店で手にしてその内容を実際に確認できませんし、けっして安価な本(定価:2,980円+税)だともいえません。もっと値段の手頃な本は、ほかにもありあます。しかし、たんに文章の書き方の指南だけではなく、コンテンツ・マーケティングという今日的な視座から広い守備範囲をカバーした内容です。

ほかの類書を読んでいないので断言はできませんが、とくにPRやソーシャルメディア(コミュニティ運営)などの関係者には、本書がたくさんの気づきやヒント、示唆を与えてくれ、読後の感想としては手元において十分に元のとれる1冊だと私は思います。

なお、PR業務に従事している人たちやソーシャルメディアを担当しているみなさんには、今回ご紹介したハンドリーの本書と2017年の書評(『コンテンツマーケティング27の極意〜編集者のように考えよう』(レベッカ・リーブ著))とをあわせて読んでいただければ、より効果的なライティングやコンテンツ・マーケティングに関する知識や効果的な活用方法について知ることができるでしょう。

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梅下 武彦
コミュニケーションアーキテクト(Marketing Special Agent)兼ブロガー。マーケティングコミュニケーション領域のアドバイザーとして活動をする一方、主にスタートアップ支援を行いつつSocialmediactivisとして活動中。広告代理店の“傭兵マーケッター”として、さまざまなマーケティングコミュニケーション業務を手がける。21世紀、検索エンジン、電子書籍、3D仮想世界など、ベンチャーやスタートアップのマーケティング責任者を歴任。特に、BtoCビジネスの企画業務全般(事業開発、マーケティング、広告・宣伝、広報、プロモーション等)に携わる。この間、02年ブログ、004年のSNS、05年のWeb2.0、06年の3D仮想空間など、ネットビジネス大きな変化の中で、常にさまざまなベンチャー企業のマーケティングコミュニケーションに携わってきた。