【書評】『コンテンツマーケティング27の極意〜編集者のように考えよう』(レベッカ・リーブ:翔泳社)

著者:梅下 武彦

コンテンツマーケティング

コンテンツは重要だと理解をしていても、その継続的な取り組みは法人か個人かにかかわらず難しい課題です。これはイノベーションと同様ですね。

コンテンツという言葉自体、口コミと同様に新しい概念ではなくむかしから存在しています。しかし、“コンテンツマーケティング”という明確な意識と発想で「あれば理想的だが」から「必要不可欠」へと大きく転換し認識されています。

コンテンツマーケティングが意識され、その方法と内容が大きな関心を集めるようになったのはここ数年のことです。
その要因は、インターネット、それも検索エンジンとソーシャルメディアが日常のコミュニケーション手段となり、メディア環境の激変がもたらしたものです。

本書の目的は、こうした時代において、みなさんの思考を編集者のように転換し、その発想(企画)力でビジネスにおいて、コンテンツマーケティングを活用できるようにしたい人たちを念頭に執筆されました。
ビジネスでコンテンツを必要としている人たちに向けて書かれています。法人が対象ですが、個人が読んでその人自身のソーシャルメディア(ブログやSNSなど)運営に活かすには十分に役立ちます。

原題は、“Content Marketing:Think Like a Publisher–How to use Content to Market Online and in Social media”です。

“メディア・コンテンツ専門家”のレベッカ・リーブ

本書は、企業においてマーケティングコミュニケーション部門の中軸ともなっているコンテンツを活用したいビジネスパーソンが対象ですが、法人・個人にかかわらずとくにPRやブログ、SNSなどソーシャルメディア運営者、オウンドメディア運営担当者者への指南書という趣の内容です。
また、“コバヘン”こと小林弘人氏が「日本語版への推薦の言葉」を寄せています。

著者のレベッカ・リーブは、デジタルマーケティング、メディアコンテンツ戦略の専門家で、いくつかのベンチャー企業での役員やマーケティング部門の責任者(編集者)を歴任し、メディア企業ではユニバーサルテレビジョンの役員経験があります。
また、『ニューヨーク・タイムズ』や『ウォールストリート・ジャーナル』など、大手新聞へ記事寄稿をするなど多彩で豊富な経験の持ち主です。

原著はパート1〜3、全26章で構成されていますが、この邦訳は1つ多い27章です。この最後の章は、原著を訳出するに際し、翻訳チーム(電通iPR局/電通パブリックリレーションズ)が国内の先進的な企業のコンテンツマーケティングへの取り組みの事例を紹介しているからです。

現在では、国内でもソーシャルメディアがとくべつなものではなく日常的なメディアと認識され、早くからそうしたメディアへの対応を打ち出した国内企業や組織・団体がケーススタディとして取り上げられています。
それらは、無印良品、ロッテ、JTBなど大手企業に加え、東京マラソン、福島県いわき市(原発の風評被害)などです。

コンテンツマーケティングについて網羅した内容

階段

コンテンツマーケティングを検討あるいは導入したいがどうしてよいのかわからない、すでに取り組んでいるが様々な悩みを抱えているなどビギナーか否かを問わず、入門者から実務経験者に関係なくコンテンツマーケティングの考え方、戦略から具体策まですべてを体系的に網羅した内容となっています。

<パート1>は、コンテンツマーケティングの基礎知識と心構えが書かれていますが、すでに実務を担当しているみなさんは十分に承知していることでしょう。
3章で、編集者になって考えるための「14のステップ」が語られています。

ステップの中で、(9)「ユーザーが作成するコンテンツの力を借りよう」、(10)「ニュースの見解を述べて編集しよう」、(13)「リサイクルしよう」などは、すべて自前コンテンツでなければという固定観念に囚われている人たちには、ちょっとした発想や工夫の仕方でコンテンツバリエーションを豊かにするヒントとなるでしょう。

<パート2>では、コンテンツタイプについての説明で、それらを5つに分類しています。特に、オンラインPRで重要なのは、SEO対策とソーシャルメディア活用です。
前者については、米国のどのPR企業でもインハウス化を強化し、優秀なSEOエキスパートをスカウトしているということです。

そうした米国PR業界の実情については、国際的PR企業である米国The Hoffman Agency日本代表の野村さんから、昨年(16年)そうした最新事情や動向をうかがう機会がありました(「攻めの広報」の"攻め"とはなにか。その3つのポイントーー「スタートアップのための攻めの広報戦略に参加して」)。

また、9章「語り口の設定」は、キャラクターが好きな日本人にはなじみがあと親しみやすさがあり、その活用方法についてです。

<パート3>が、本書の中心であり、全320ページの内、3分の2(約200ページ)を占めています

まず10章では、20のデジタルチャンネルの種類ーーeメールからブログ、SNS、GPS、スマホのネイティブアプリ等々ーーが紹介されています。国内ではまだあまり事例が多くないウェビナー、車社会の米国では重要なポッドキャストなどはもっと活用したところです。

また、「オンラインメディアセンター」という発想は、なかなか日本人からはでてきません。ソーシャルメディアニュースルームを設け、それらでのオーディエンスのコンテンツ活動を支援する事例(BASF)が紹介されています。

PR担当者とカスタマーサービス担当者には、12章と15章が参考となるでしょう。
著者が「ワークフローこそが、コンテンツマーケティング行方を左右するキモなのだ。」と語るのが22章です。

つい情報発信に誰でもが偏りがちですが、傾聴の重要性を説くのが23章。
コンテンツマーケティング運用に役立つ多彩なオンラインツールを、分野やタイプ別に一覧表で紹介している25章。

ざっとご紹介をしただけですが、「目次」、著者による「イントロダクション」、小林弘人氏の「推薦文」、1章と2章の全文、3章の一部などは、出版社(翔泳社)のサイトで「立ち読み」で確認することができます。

マーケティング<コミュニケーション

地球と人

20世紀、それはメディアの時代でした。メディアは買うものであり、コンテンツもそれにあわせて買うものでした。つまり広告枠を買うということ。プッシュ型のメッセージが基本です。

21世紀、ソーシャルメディアの時代です。それは自らがメディアをつくり出しあるいはメディア化し、コンテンツも自らが創出する時代に転換しました。メッセージだけではなく、多種多様で魅力的なコンテンツを提供しながら引きつけるプル型コミュニケーションです。

つまり、マーケティングコミュニケーションにおいて、発想や視点、着想から戦略にいたるまで、すべて180度転換しなければなりません。そのために有効なのがコンテンツなのですが、これはいわゆる「言うは易く行うは難し」の典型例でしょう。
例えば、TVCMをYouTubeにアップしておけば、誰でもがいつでも何度でも見ることができ、様々なソーシャルメディア上でシェアされて拡散していきます。映画タイトル風にいえば「いまそこにいる顧客」にコンテンツを提供することが、編集者には求められています。

従来のメディアに加え、オーディエンス(社会)と直接コミュニケーションできる主体的なメディアを手にしたメディア環境の今日どうすればよいのか示唆になるでしょう。
しかし、それは旧来メディア(4大媒体)を否定するものではありません。そもそも役回りが異なるのですから。

今回の本とあわせて読むと参考となる本を5冊、以下にご紹介します。

(1)『【増補改訂版】インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ:ブライアン・ハリガン/ダーメッシュ・シャア)
(2)『エフェクト』(かんき出版:ブライン・ソリス)
(3)『ウェブはグループで進化する』(日経BP:ポール・アダムス)
(4)『アンバサダーマーケティング』(日経BP:ロブ・フュジェッタ)
(5)『あなたがメディア!』(朝日新聞社:ダン・ギルモア)