「デプスインタビューとは何か」「実務にどう活かせるのか」と疑問に思っていても、用語や説明が曖昧で、結局何をすればよいのかわからないことも多いのではないでしょうか。
デプスインタビューとは、1対1で相手の深層心理や価値観、意思決定プロセスを探る定性調査で、新規事業やBtoBマーケティング、PRでも重要性が高まっています。
この記事では、デプスインタビューの基本定義やメリット・デメリット、実施方法、適切な人数、質問項目を整理し、調査で終わらせずマーケティングやPRに活かす方法までわかりやすく解説します。
この記事の要約
・デプスインタビューとは「深層心理」を探る定性調査手法
・「なぜ」を掘り下げることで、顧客に刺さるコピーや戦略のヒントを得られる
・PR・SEO・広告・LPなど全マーケティング施策に活用可能
デプスインタビューとは?基本定義と特徴

「デプスインタビュー」とは、1対1で実施する定性調査で、顧客の深層心理や価値観、意思決定プロセスを明らかにする手法です。
単なる意見収集ではなく、「なぜそう思ったのか」を繰り返し掘り下げることで、表面に出てこないインサイトを抽出します。
近年、競争が複雑化し、顧客理解の難易度が上がる中で、ビジネスにおいて重要視されるようになってきました。情報が溢れる現代では、ユーザー自身も購買理由を明確に言語化できていないケースが多く、「なんとなく良かった」で意思決定が行われます。
この“なんとなく”を構造化するのがデプスインタビューです。
ビジネス用語としての「デプス(depth)」は、単に深さを意味するのではなく、「表層ではなく本質まで掘り下げること」を指し、顧客の本音・無意識・感情を扱う概念として使われています。
デプスインタビューと他の調査手法の違い

デプスインタビューは、他の調査手法と比較して「深さ」に特化した手法です。
どの場面で使うべきかを理解するため、まずは似た概念と整理しましょう。
In-depthインタビューとの違い
デプスインタビューとIn-depthインタビューは同義です。日本語と英語の表記が異なるだけで、海外でも同様に1対1の深掘り調査として活用されています。
デプスインタビューはグローバル市場でも共通の概念なので、海外展開を見据えたリサーチでも有効です。
グループインタビューとの違い
グループインタビューは複数人で実施するのに対し、デプスインタビューは1対1です。そのため、このような違いが生まれます。
・同調圧力がないため本音が出やすい
・発言の内容が深い
・センシティブなテーマにも適している
一方で、グループインタビューはアイデアの発散や傾向把握に向いています。深掘りしたいか、広く把握したいかで使い分けましょう。
アンケート調査との違い
アンケートは「どれくらい」を測る定量調査であり、デプスインタビューは「なぜ」を掘る定性調査です。
たとえば、「満足度」はアンケートで明らかになりますが、「満足度が高い理由」までを知りたい場合、アンケートでは限界があります。
理想的な流れはこのようなステップです。
①デプスインタビューで仮説を作る
②アンケートで検証する
この順番で使うことで、精度の高い意思決定が可能になります。
デプスインタビューのやり方【5ステップ】

デプスインタビューは、正しい手順で行わなければ効果が薄くなってしまいます。
ここでは、実務で使える5ステップを順番に解説します。
① 仮説設計
デプスインタビューで最初に重要なのは、目的と仮説を明確にすることです。
単に「ユーザーの声を聞く」「本音を知りたい」といった曖昧な目的で始めると、話を聞けても、結局何がわかったのか整理できません。そうならないためには、事前に「この調査で何を明らかにしたいのか」「どの仮説を検証したいのか」を言語化しておく必要があります。
たとえば、「なぜ競合ではなく自社を選んだのか」「なぜ資料請求はしたのに導入には至らなかったのか」「なぜ価格が高くても選ばれたのか」といった問いがあるだけで、聞くべき内容は大きく変わります。
また、問いに対する複数の仮説があることで、インタビュー中の深掘りにも軸が生まれ、単なる雑談で終わりにくくなります。
最初に設計を丁寧に行うことで、その後の質問設計や分析の精度も高まります。
② 対象者リクルート
デプスインタビューは、「誰に話を聞くか」が成果を左右します。
たとえば「なぜ購入したのか」を知りたいのに、購入していない人ばかりに話を聞いても、欲しい示唆は得にくくなります。逆に、「なぜ比較検討で離脱したのか」を知りたいなら、見込み顧客や離脱ユーザーに話を聞く必要があります。
そのため、事前にセグメントを整理しておくことが重要です。たとえば以下のように分けると、リクルートの精度が高まります。
・既存顧客
・競合から乗り換えた顧客
・検討したが購入しなかった人
・継続利用している優良顧客
・一度使って離脱した人
このように対象者を適切に分けることで、表面的な意見ではなく、意思決定の違いや背景事情まで見えやすくなるでしょう。
また、一般的な人数の目安は5〜15人程度です。これは定性調査における「飽和」という考え方に基づいています。一定数を超えると新しい発見が出にくくなり、同じような意見が繰り返されやすくなるためです。
③ 質問設計
質問設計では、回答者が自由に話せるオープンクエスチョンを中心に組み立てることが基本です。はい・いいえで終わる質問ばかりでは、深層心理や意思決定の背景は見えてきません。
また、「なぜそれを選びましたか?」という質問だけでは、相手はもっともらしい理由を後から作って答えることもできます。
そこで、「その商品を必要だと思ったきっかけは何でしたか」「比較していたとき、どんな不安がありましたか」「最終的に決めた直前に何を考えていましたか」といったように、行動の前後や感情の流れまで聞くことで、より具体的な本音を引き出しやすくなります。
最初から深く切り込む質問は避け、話しやすいテーマから徐々に深掘りしていく流れを作るよう意識しましょう。
④ 実施
実施の場面では、質問内容だけでなく、相手が安心して話せる環境づくりが非常に重要です。
特に企業担当者がインタビューする場合、相手が気を遣ってネガティブな意見を言いづらくなることもあるため、聞き方や空気感に配慮しましょう。
一般的な所要時間は1回あたり60〜90分ほどですが、対象者が無理なく話せる時間を設定し、事前に目的や所要時間を共有しておきます。
また、録音や録画を行い、後から振り返ることができる状態を作ることが基本です。文字起こしも行い、事実ベースで発言を見返せるようにしておくと安心でしょう。
⑤ 分析とインサイト抽出
デプスインタビューは、話を聞くだけでは価値になりません。重要なのは、発言を整理し、意思決定の共通パターンや本質的なインサイトを抽出することです。
分析では、まず発言を「課題」「比較」「不安」「決め手」などの観点で分類し、共通点や違いを見ていきます。その際に重視すべきなのは、言葉そのものではなく「なぜその行動を取ったのか」という背景です。
たとえば「価格が決め手」と言っていても、実際には「高くても納得できる理由を求めていた」可能性もあります。発言の前後やトーンも含めて解釈することが重要です。
整理の観点は以下の通りです。
・課題:何に困っていたか
・比較:何と比べていたか
・不安:何が障壁だったか
・決め手:何が最後の後押しになったか
・感情:どの場面で納得や不満が生まれたか
最終的には、得られたインサイトをLPや広告、PRなどの施策に落とし込むことがゴールです。「話を聞いて終わり」ではなく、「次の打ち手につなげる」ことが重要です。
デプスインタビューの質問項目例

質問する項目は、成果を左右する重要な要素です。
良い質問とは、単に意見を聞くだけでなく、意思決定の流れを再現できるレベルまで掘り下げることで、施策に使えるインサイトが得られるような質問です。
ここでは実務でそのまま使える質問例を紹介します。
課題探索型
ユーザーの現状課題や不満、背景にある状況を把握する質問です。課題の「発生タイミング」と「深さ」を具体化することが重要です。
・現在どのような課題を感じていますか?
・その課題はいつ・どんなきっかけで発生しましたか?
・その課題があることで、どんな不便やストレスがありますか?
・課題を解決しようとして、これまでに何か行動しましたか?
・そのとき、うまくいかなかった理由は何ですか?
・もしその課題が解決したら、どのような状態になりますか?
ポイントは、「困っていること」だけでなく、「なぜ困るのか」「どの程度困るのか」まで掘り下げることです。ここが浅いと、後の訴求も弱くなります。
意思決定プロセス型
ユーザーがどのように情報収集し、比較し、最終的に選択したのかを把握する質問です。時系列で聞くことで、意思決定の流れが明確になります。
・その商品・サービスを知ったきっかけは何でしたか?
・最初に情報収集したとき、どのような方法を使いましたか?(検索・SNS・口コミなど)
・比較検討したサービスや選択肢は何がありましたか?
・比較する際に重視していたポイントは何ですか?(価格・機能・実績など)
・検討中に不安に感じていたことはありましたか?
・最終的に決めたタイミングはいつでしたか?そのとき何が起きていましたか?
・「これにしよう」と思った決定的な理由は何ですか?
・購入・導入直前に迷いはありましたか?それはどう解消されましたか?
さらに深掘りする場合は、「なぜそれが重要だと思ったのか」「他の選択肢ではダメだった理由は何か」まで聞くことで、より具体的な意思決定の構造が見えてきます。
これらの質問を組み合わせていくことで、「課題の発生 → 情報収集 → 比較 → 不安 → 決定」という一連の流れを把握できます。
ここまで整理できると、LPや広告、PRの訴求ポイントを設計する際に活かせる材料になるでしょう。
デプスインタビューのメリット

デプスインタビューは、単なる意見収集ではなく、ユーザーの意思決定の裏側にある「なぜ」を明らかにできる点に価値があります。
ここでは、マーケティングやPRにおいて特に重要となる4つのメリットを解説します。
①深層心理を引き出せる
デプスインタビューの最大の価値は、ユーザー自身も言語化できていない深層心理や意思決定の背景を引き出せる点にあります。
人は購買後に理由を正当化する傾向があるので、「安かったから」といった表面的な回答だけでは本質は見えません。
重要なのは、「なぜそのタイミングで必要だと思ったのか」「どの瞬間に意思決定したのか」までを掘り下げていくことです。また、発言内容だけでなく、話し方やトーンからも本音の強度を判断することができます。
②新規事業・BtoBに強い
デプスインタビューは、サンプル数が限られる新規事業やBtoB領域でも有効です。
特にBtoBでは意思決定プロセスが複数で長期間にわたるため、単に大人数にアンケートを取るだけでは導入の背景や障壁を把握しきることはできません。
デプスインタビューを通じて、誰が・どのタイミングで・何を理由に判断したのかを明らかにすることで、営業資料や訴求設計の精度を高めることができます。
③仮説検証に有効
事前に立てた仮説を深く検証できる点も、デプスインタビューの大きなメリットです。なぜなら、「想定していたペルソナやニーズが本当に正しいのか」を確かめることができるからです。
仮説と実際のユーザー行動のズレを把握することで、より解像度の高いターゲット設計が可能になります。その結果、訴求のズレや無駄な施策を減らし、マーケティング全体の精度向上につながります。
デプスインタビューのデメリットと注意点

一方で、デプスインタビューは設計や実施を誤ると、時間とコストだけがかかり、成果につながらないリスクもあります。特にバイアスや分析不足といった落とし穴に注意が必要です。
ここでは、実務で失敗しやすい4つのポイントと、適切に活用するための注意点を解説します。
①時間・コストがかかる
デプスインタビューは1対1で実施するため、1件あたりの時間的・人的コストが大きい手法です。対象者のリクルーティングにも手間がかかり、短期間で大量のデータを集める用途には向いていません。
そのため、目的を明確にしたうえで実施しないと、コストに見合う成果が得られないリスクがあります。
②バイアスがかかりやすい
インタビュアーの意図や期待が入りやすく、誘導質問や解釈の偏りが発生しやすい点にも注意が必要です。特に自社担当者が実施する場合、「売りたい」「よく見せたい」という意識からポジティブな回答を引き出そうとしてしまい、客観性が損なわれることがあります。
こうしたリスクを避けるためには、第三者に依頼する、もしくは事前に質問設計を厳密に行うことが有効です。
また、海外市場を対象とする場合は、文化的背景や言語の違いにも注意が必要です。
同じ質問でも文化によって受け取り方が異なり、回答のニュアンスが変わることがあります。翻訳の過程で意味がずれる「翻訳バイアス」も発生しやすいため、現地理解のある設計や解釈が求められます。
③雑談で終わってしまうことがある
目的や仮説が曖昧なまま実施すると、単なる雑談で終わってしまうケースがあります。話は盛り上がっても、分析に使える情報が得られなければ意味がありません。
あらかじめ「何を明らかにするのか」を定義し、質問項目と紐づけておくことで、インタビューの質を担保することが重要です。
④分析・戦略立案のハードルがある
インタビューで得た情報を整理・分析できないと、施策に落とし込めず「聞いて終わり」になってしまいます。
重要なのは、発言を構造化し、共通する意思決定パターンを抽出することです。そのうえで、LPや広告、PRなど具体的な施策に接続していく設計がなければ、デプスインタビューの価値は十分に発揮されません。
デプスインタビューを“戦略”に活かす方法

デプスインタビュー得られたインサイトは、LPや広告、SEOなどあらゆるマーケティング施策に活かすことができます。
ここでは、実務で活用するためのポイントを解説します。
あえてデプスインタビューとしてやらなくても良い
まず重要な前提として、必ずしも形式的にインタビューを実施しなくても、日常の会話や商談の中からインサイトを拾うことは十分に可能です。
たとえば「今回のプロジェクトがスムーズに進んで良かった」という何気ない一言から、「過去にどのような失敗や不満があったのか」を掘り下げることで、顧客に刺さるコピーのヒントを得ることもできるでしょう。
人は意識していないときほど本音に近い発言をするため、デプスインタビューを実施する前に、日々の会話からインサイトを拾おうとする姿勢が重要です。
では、ここからはデプスインタビューの活用ポイントを5つ解説していきます。
①定量調査との使い分け
デプスインタビューは「なぜ」を明らかにする手法であり、定量調査は「どれくらい」を測る手法です。
まずデプスインタビューで仮説やインサイトを抽出し、その後アンケートなどで検証する流れが理想です。
これらの違いを混同すると、表面的なデータだけが増え、本質的な意思決定の理由が見えなくなります。
②PR戦略設計への活用
デプスインタビューで得られる「体験談」や「不満」は、そのままPRやコンテンツの切り口になります。
たとえば「使ってみたらサポートが想像以上に丁寧だった」という声があれば、それは「導入後の体験」が満足度に大きく影響していることを示しています。
このような声をもとに、継続率や顧客満足度をPRすることもできますし、導入からその後のプロセスをストーリーにすることで、PRコンテンツとして活用することも可能です。
③ブランドポジショニング設計
競合との差別ポイントは、機能や価格だけではありません。実際に重要なのは、「なぜ最終的にそのサービスが選ばれたのか」という理由です。デプスインタビューを通じて、この理由を明らかにすることで、ユーザーがどの価値に魅力を感じているのかを具体的に把握できます。
たとえば「対応が早くて安心できた」「担当者の理解が深かった」といった声は、そのまま自社の強みになります。
こうした要素を整理することで、「どのような価値で選ばれるブランドなのか」が明確になり、他社との差別化軸を設計できます。
これはすべてのマーケティング施策の土台となる、非常に重要なプロセスです。
④BtoBマーケティングでの活用
BtoBでは、意思決定が複数人で行われるため、導入の背景や障壁が複雑です。
デプスインタビューを通じて、誰がどのような理由で意思決定に関わったのかを把握することで、営業資料や提案内容の精度を高めることができます。
⑤海外展開における活用
海外市場では、文化や価値観の違いが意思決定に大きく影響します。
デプスインタビューによって現地の認識やニーズを深く理解することで、ローカライズされた戦略設計が可能になります。単なる翻訳ではなく、文脈ごと理解することが重要です。
関連記事:海外マーケティングとは?日本との違い、海外進出をする前に知っておきたい基礎を解説
まとめ:デプスインタビューを調査で終わらせないために

デプスインタビューは、顧客の深層心理を理解できる強力な手法です。しかし、ただ形式的にインタビューを実施するだけでは意味がありません。
対象者や質問の設計から分析までを一貫して行い、その結果をSEO・SNS・広告・PRといった複数の施策と組み合わせることで、初めてマーケティングの成果につなげることができます。
しかし、戦略設計から施策の実行までを一貫して行うには、専門知識や人的リソースが求められるため、これらすべてを自社で設計・運用するのは容易ではないでしょう。
シェイプウィンでは、PRとマーケティングの両軸から、デプスインタビューの設計だけでなく、その後の戦略設計や施策実行までを包括的にサポートしています。
調査で終わらせず、成果につなげたい方は、まずはお気軽にご相談ください。
