マーケティング施策を改善しようとABテストや導線設計を重ねているのに、「なぜか成果が伸びない」「数字の根拠を説明できない」と感じたことはないでしょうか。
多くの場合、その原因はデータやロジック以前に、「人の意思決定そのものが必ずしも合理的ではない」という点を、見落としているからかもしれません。
本記事では、心理学とマーケティングの関係性を整理した上で、実務で使える心理学テクニック10選と、マーケティング施策への落とし込み方を解説します。
この記事の要約
・マーケティングの根本は「人の行動理解」であり、心理学と切り離せない
・有名な心理原則と、現場で使える具体的な活用例を知ることが重要
・心理学は短期施策だけでなく、LTVやカスタマーサクセスにも効く
マーケティング施策については、こちらに多数の記事をアップしています。併せてご参照ください。
マーケティングに心理学は使える?

マーケティングに心理学は使えるのか? その答えは「使える」どころか、マーケティングの本質そのものが心理学を土台にしています。なぜなら、マーケティングとは単に商品やサービスを売ることではなく、「人の意思決定を後押しする行為」だからです。
人は合理的に判断しているようで、実際には思い込みや感情に大きく左右されています。
たとえば「推し活」や高級車・ブランド品の購入を考えてみてください。費用対効果を数値化することは難しく、合理性だけで説明できる行動ではありません。それでも人は「好きだから」「その体験が欲しいから」という理由のみで選択します。
こうした意思決定の裏側には、本人も自覚していない心理要因が介在しています。
マーケティング施策は、その「見えない心理」に働きかけることで初めて成果につながります。
実際、コピーやUIを少し変えただけでCVRが大きく改善するケースは珍しくありません。これは施策が偶然当たったのではなく、心理トリガーに触れた結果です。
心理学の歴史を振り返ると、当初は内観法などの主観的な手法が中心でしたが、行動を客観的に観察する行動心理学が確立されたことで、マーケティングとも親和性の高い学問になりました。
現代では、マーケティングをする上で心理学は必須の知識と言えるでしょう。
心理学とマーケティングの原則
マーケティングで心理学を活用する際に、まず押さえておきたいのが、ロバート・B・チャルディーニが提唱した6つの心理原則です。これらは多くのマーケティング施策に共通しています。
・返報性:何かを与えられると、お返しをしたくなる心理
・コミットメントと一貫性:一度決めたことを守ろうとする心理
・社会的証明:他者の行動を正解だと感じやすい心理
・権威:専門家や権威ある存在を信頼する心理
・好意:好意を持つ相手の意見に同意しやすい心理
・希少性:手に入りにくいものほど価値を感じる心理
重要なのは、これらを単発で使うことではなく、自社の商品やサービスの価値をより正確に、より伝わりやすくする補助線として使うことです。
ユーザーが本来感じるはずの価値を、意思決定しやすい形に整える。その視点でこれらの原則取り入れることで、マーケティング施策の説得力は大きく高まります。
実務で使える代表的な心理学10選
ここでは、実務で特に活用しやすい心理学テクニックを10個紹介します。いずれもABテストやUI改善、コンテンツ設計で即活用できるものです。
①ウィンザー効果(第三者評価が与える影響)

ウィンザー効果とは、当事者の主張よりも第三者からの評価の方が信頼されやすい心理です。
企業が「良い商品です」と言うより、ユーザーのレビューや口コミの方が信頼されるのはこの効果によるものです。
たとえば、商品ページにUGCやレビューを適切に配置することで、CVRが向上する事例は多く、特に購入直前の不安を解消する役割を果たします。
レビューは量だけでなく、文脈を意識して最適化することが重要です。
②社会的証明(多数派が正しいという認知)

社会的証明とは、「多くの人が選んでいる=正しい選択だ」と感じて意思決定しやすくなる心理です。
人は自分で判断しているつもりでも、多数派の行動に大きな影響を受けています。そのため、「選ばれています」「導入実績◯社」という表現が、意思決定のハードルを下げるのです。
たとえば、LPやCTA直前に「導入社数」「利用者数」「継続率」「レビュー件数」「業界別の採用実績」などを置くことで、申込の不安を減らせます。特にBtoBでは「同業他社の導入」「似た規模の導入」が強力なので、実績の数だけでなく「近さ」を見せるのがポイントです。
③損失回避バイアス(利益を得るより損を避けたい心理)

損失回避バイアスとは、得をする喜びより、損をする痛みのほうが強く感じられるという心理です。
「得できるかも」より「逃すと損」に反応しやすいため、迷っている人の背中を押す場面で有効です。
手法としては、「今だけ」「残り○つ」「期限」などの表現に加えて、BtoBなら「放置すると起こる損失(工数・機会損失・広告費のムダ・CV取りこぼし)」を具体化するのが有効です。
煽るのではなく、合理的に損失を可視化すると、ブランド毀損を避けつつ効果を出せます。
④フレーミング効果(提示の仕方で印象が変わる)

フレーミング効果とは、同じ内容でも「どう表現するか」で受け取られ方が変わる心理です。
ユーザーは事実そのものより、提示された枠組み(フレーム)で価値を判断しています。
マーケティングでは、コピーや価格提示、比較表、事例の見せ方に直結します。
たとえば「月◯円」か「1日◯円」か、また「成功率90%」か「失敗率10%」かで心理的な負担が変わるため、メールの件名・LPのベネフィット表現・料金表の単位をABテストするだけでも差が出ます。
伝える順番や単位などの表現を工夫することで、同じ価値でもより効果的に伝わる状態を作れます。
⑤ハロー効果(目立つ特徴が全体の評価に影響する)

ハロー効果とは、一つの強い印象(権威・実績・デザインなど)が、全体の評価まで引き上げたり下げたりする心理です。
ユーザーは細部を検討する前に、目立つ情報で「良さそう/怪しそう」を先に決めてしまいます。
マーケティングでは、ファーストビューの設計が勝負です。
導入実績(ロゴ)、受賞歴、専門家監修、メディア掲載、数字(継続率・満足度)などを最初に見せることで、サービス理解の前に「信頼の土台」を作れます。逆に、見た目の粗さや根拠の薄い主張は、それだけで全体の信用を落とします。
ハロー効果は、比較検討が激しい領域ほど効きやすいので、最初の数秒で「信頼できる」と思わせる材料を揃えるのがポイントです。
⑥一貫性の原理(言動の一貫性を保ちたい心理)

一貫性の原理とは、「人は自分の言動を一貫させたい(前に言ったことを守りたい)」という心理です。
一度「自分はこういう課題がある」と認めたり、小さく同意したりすると、その後の行動もそれに沿いやすくなります。
施策では、いきなり「申込」ではなく、段階的に「はい」を積ませる設計が有効です。
たとえばLPなら「課題の共感 → 原因の納得 → 解決策の理解 → 小さなアクション(診断・チェックリストDL) → 申込」の順にすると、心理的抵抗が下がります。
フォームも、最初に答えやすい項目を置く、選択式で始めるなどが有効です。
一貫性の原理を用いることで、一方的な押し売りではなく、ユーザーが自身で納得する状態を生み出すことができます。
⑦返報性の原理(何かを受け取るとお返ししたくなる心理)

返報性の原理とは、価値を受け取ると「何か返したい」と感じる心理です。
売り込みより先に「役に立った」という体験を作ることで、信頼と次のアクションが生まれやすくなります。
マーケティングでは、ホワイトペーパー、テンプレート、診断、無料ウェビナーなどの先出しが王道です。特にBtoBは検討期間が長いので、DL後のナーチャリング(ステップメール、事例案内、課題別コンテンツ)までセットにすると、返報性の原理によって商談につながりやすくなります。
重要なのはコンテンツの「量」より「質」で、実際に役に立ったと実感してもらうことです。返報性は、関係構築の起点としても取り入れやすい心理効果です。
⑧希少性の原理(手に入りにくいものほど欲しくなる)

希少性の原理とは、手に入りにくいものほど価値が高いと感じ、行動が早まる心理です。
人は「いつでも買える」と思うと先延ばししやすいため、意思決定の締め切りを作ると動きます。
たとえば、「残り○つ」「先着○名」「期間限定」などの表現のほか、「相談枠」「診断枠」「個別レビュー枠」など、運用上の制約と結びつけると自然に見えます。LPの申込ボタン付近やフォーム上部に配置し、事実ベースで表現しましょう。
ただし、毎回同じ「限定」を繰り返すと信用を落とします。希少性の原理は乱用せず、根拠のある限定に限定して使うのが鉄則です。
⑨単純接触効果(接触回数が多いほど好意が増す)

単純接触効果とは、接触回数が増えるほど親近感が増し、好意や信頼が形成されやすい心理です。
人は未知のものを避ける傾向があるため、「見慣れていること」はそれだけで安心材料になります。
施策では、リターゲティング広告、継続的なメルマガ、SNSの定期接触、ウェビナーのシリーズ化などが典型です。
重要なのは、同じものを単に何回も見せることではなく、検討段階に合わせて情報を変えることです。
この効果は顧客獲得段階だけでなく、購入後の継続にも有効です。
SNS活用はこちらの記事をご参照ください。
プロに聞いたSNSマーケティング成功事例5選と3つの秘訣!どうやってトレンドをキャッチアップする?
⑩バンドワゴン効果(流行に乗り遅れたくないという心理)

バンドワゴン効果とは、「みんなが選んでいるなら自分も」という同調心理です。
特に正解が分かりにくい選択では、多数派に乗ることで判断コストを下げようとします。
マーケティングでは「◯万人が利用」「導入企業が急増」「いま注目の施策」など、流れや勢いを見せることが有効です。BtoBの場合は「同業界で標準化しつつある」「競合が先にやっている」などの文脈にすると、意思決定の説得力が上がります。
ただし不安を煽りすぎると、購入後に「焦って買わされた」という不満につながりかねません。安心感の提示として使い、過度な煽りにならないよう注意しましょう。
心理原則を用いる際はパーソナライズが効果的
これらの心理効果は、万人向けに使うよりも、属性や検討状況に合わせて出し分けると効きやすくなります。
性格分類やMBTI診断、心理テストなどは胡散臭く見えることもありますが、「リスク回避タイプには安心材料を厚く」「成果志向タイプには数字と事例を強く」など、訴求軸の最適化に使えます。
結果として、同じLPでも刺さり方が変わり、ABテストの勝ち筋も見えやすくなります。
施策設計に心理学を落とし込む3つのステップ

心理学は知識として知っているだけでは成果につながりません。重要なのは、施策設計のプロセスにどう組み込むかです。
ここでは、心理学を机上の理論で終わらせず、実務で再現性を持って活かすための3ステップを整理します。
ステップ1:目的と行動を整理する
まず重要なのは、この施策で何を達成したいのか、ユーザーに最終的にどんな行動を取ってほしいのかを明確にすることです。
具体的には、「資料DLを増やしたい」「商談化率を上げたい」「解約を防ぎたい」など、ゴールを1つに絞ります。そのうえで、ユーザーがその行動に至るまでのプロセスを行動マップに可視化します。
このとき重要なのは、ユーザーの行動だけでなく「その段階でユーザーが何を不安に思っているか」「何に迷っているか」といった心理状態まで書き出すことです。
心理学は、この迷いやためらいを解消するために使います。
ステップ2:心理トリガーを選定する
次に行うのが、その段階で最も効く心理効果を選ぶことです。
ここでよくある失敗は、「使えそうな効果を全部入れる」ことですが、これは逆効果になりがちです。心理効果は数を増やすほど強くなるわけではなく、文脈に合っていないと逆に不信感や不自然さにつながります。
心理トリガーには、ユーザーの検討フェーズごとに向き不向きがあります。
初回接触フェーズ
・有効な心理トリガー:社会的証明、ハロー効果
・目的:安心感を与え、「怪しくない」と思ってもらう
比較検討フェーズ
・有効な心理トリガー:ウィンザー効果、フレーミング効果
・目的:他社との違いや価値を理解・納得してもらう
意思決定直前フェーズ
・有効な心理トリガー:損失回避バイアス、希少性の原理
・目的:迷いを断ち、行動に踏み切ってもらう
このように、ジャーニーごとに「不安を下げたいのか」「背中を押したいのか」「納得感を高めたいのか」を考え、その目的に合う心理トリガーを1〜2個に絞ることが重要です。
ステップ3:仮説設計とABテストへの実装
最後に、選んだ心理効果を具体的な施策に落とし込み、ABテストで検証します。
心理学は絶対的なものではないため、「この心理を使えば必ず成果が出る」という前提ではなく、「この心理が効果的なはずだ」という仮説として扱うのが重要です。
たとえば、「社会的証明をCTA付近に置けばCVRが上がるのではないか」「損失回避の表現に変えると申込率が上がるのではないか」といった形で、コピー・配置・順番などを変えてテストします。この際、サンプル数が十分か、他の要素を同時に変えすぎていないかなど、検証設計にも注意が必要です。
ABテストを通じて再現性が確認できれば、それは「勘」ではなく「ノウハウ」になります。それらを属人化させず、チームで共有できる資産にすることが、最終的なゴールです。
よくある質問(FAQ)
最後に、シェイプウィンがマーケティング支援をする中で、お客様から多く寄せられる質問と回答をまとめました。
心理学を使う際の注意点は?
心理学は、短期成果を出すための小手先のテクニックとして使うと、むしろリスクが高い点に注意が必要です。心理学は人の感情や判断に直接働きかける分、使い方を誤ると「煽られた」「騙された」というネガティブな印象を残しやすくなります。
特にありがちなのが、CVRや申込数といった短期指標だけを追い、希少性や損失回避を乱用してしまうケースです。一時的には数字が伸びても、購入後に期待とのギャップが生じると、クレームや悪い口コミにつながり、結果的にブランド価値を下げてしまいます。
また、獲得時には頻繁に接触していたのに、購入後は何のフォローもないという状態は、単純接触効果が途切れ、解約や乗り換えを招きやすくなります。
心理学は「買わせる」ためだけでなく、「使い続けてもらう」ための設計も必要で、カスタマーサクセス視点での活用が欠かせません。
どの心理効果から使えばいい?
まず押さえたいのは、心理効果に確実な正解はなく、目的によって使う効果や順番が変わるという点です。何から使うか迷った場合は、「今、何を改善したいのか」から逆算すると整理しやすくなります。
目的別に見ると、心理効果は大きく次のように使い分けられます。
・すぐに反応を取りたい、申込の背中を押したい場合
→損失回避バイアス、社会的証明
理由:迷っている状態を短時間で行動に変えやすい
・検討期間が長い商材・高単価商材の場合
→ウィンザー効果、フレーミング効果
理由:比較・納得のプロセスを後押しできる
・継続利用やLTVが重要なサービスの場合
→単純接触効果、一貫性の原理
理由:信頼と関係性を積み上げやすい
重要なのは、「効果が強い心理効果か否か」ではなく、「今のフェーズのユーザーに何が足りないか」を基準に選ぶことです。目的別・フェーズ別に整理することで、心理学を施策設計の判断軸として使えるようになります。
ABテストで心理効果を試すときの注意点は?
ABテストで最も注意すべきなのは、仮説が曖昧なままテストを始めてしまうことです。
「なんとなく良さそう」という理由のみでテストを設計してしまうと、良い結果が出ても、なぜ良かったのかを説明できません。
テストを行う際は、「どの心理効果を、どの行動に対して、どのように効かせたいのか」を言語化した仮説を先に立てることが重要です。
心理効果と数値変化の因果関係を意識して検証できれば、結果は単発の成功ではなく、次の施策にも使える再現性のある知見になります。
まとめ:心理学を組み込むことでマーケティング施策が変わる

心理学をマーケティングに組み込むことで、施策は「当たるかどうかの運任せ」から、「人の行動原理に基づいた戦略」へと変わります。ユーザーの意思決定を理解し、適切な心理トリガーを選ぶことで、説得力と共感を伴ったコミュニケーションが可能になるのです。
一方で、心理学は重要である反面、これだけを取り入れればマーケティングの成果が出るような万能薬ではありません。
SNS運用、SEO、広告、PRなど、マーケティング施策は複雑に絡み合っており、忙しい現場ですべてを包括的に設計・運用するのは容易でないのが現実です。
シェイプウィンでは、心理学的視点を踏まえつつ、SNS・マーケティング・SEO・PRを横断した支援を行っています。部分最適ではなく全体最適で成果を出したいと考えている方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
