PR(広報)にも必要な「3R推進活動」という視点と戦略

著者:梅下 武彦

ターゲット

先日、街で偶然にも「3R活動推進フォーラム」というポスターを見かけて気づいたことがあり、それについて今回のブログではお話しをします。
それは、今日の広報活動でも「3R活動推進」をするという視点とそれに基づくコミュニケーション戦略が必要だということです。

先の街のポスターは、資源を「Reduce(無駄を減らす)、Reuse(繰り返し使う)、Recycle(再生して利用する)」を推進し、循環型社会を目指すことの告知で10月はその推進月間だったのです。
みなさんは、多分ご存じだろうと思います。私自身、日頃から資源の削減やゴミの分別には十分に配慮しているのですが、恥ずかしながらこの推進月間について初めて知りました。

広報の本質とは何か

クラウドコンピューティング

2年ほど前、私は広報(PR)というのは、人が他者(社会)と接する態度(物腰や言葉づかいなど)が人格として現れるように、企業も同様で「企業として社会(様々な人々)に向き合うあるいは接する物腰すべてがPRとなる可能性」があると述べました。

個人でも人格者だと評される人は少ないでしょうが、法人格でも昨今の国内企業の相次ぐ不祥事に関する多くのニュースに接すると同様なことを感じます。

広告・宣伝が、企業が製品・サービス、企業活動などについて自らが触れ回る活動だとすれば、PRの本質とは、それらについて第三者をして語らしめることにあると私個人は考えています
つまり、自分がいかに素晴らしいかをアピールすること(しかも有料で)が広告や宣伝だとすれば、第三者(友人や知人など)の口からその人の素晴らしさを好意として伝えられた方が(もちろん無償)、他者はその人について信頼や評価をするようになるということで、これは多分、誰でも経験していることでしょう。

広報における3Rとは

3つの矢印

さて、広報における3Rとは私個人は以下の3つだと考えています。

(1)Relations(PR)

PRは、1920年代に米国で誕生したといわれていますが、日本には第2次世界大戦後の1940年代になり米国から導入されました。
日本語では「広報」という訳語が当てられているPublic Relationsは、Relationsと常に複数形です。

しかし日本において、広報というとどうしても企業からの情報を世間に対して伝えるというニュアンスがあり、ここはやはりPRという言葉をそのまま使うのが、私としては理想的だと考えているのですが、それだと逆に宣伝的印象を与えてしまうことをとてももどかしく感じています

1970年代以降、米国では「パブリック・アフェアーズ(Public Affairs)」といわれ出しましたが、一般的なコンセンサスを得るにはいたっていません。また、最近では従来のPR(広報)という枠組みから、企業のあらゆる側面(活動)を内外により広く伝えることを目的としたコーポレート・コミュニケーションズ(Corporate Communications)という名称も増えています。

そもそも、Public Relationsの複数である理由ですが複数形“s”がつくと「相関係・互恵」というような意味を持ちます。さらに、様々な内外のパブリックーーそれは関係者(ステーク・ホルダーなど)を含めてーー多種多様なコミュニティ(社会)との関係を構築することーーは、つまり市民社会を構成する一員であることの証しなのです。

さて、米PR業界団体のPRSA(アメリカPR協会)は2012年、PRについて1982年以来の新たな定義を発表しました(実に30年ぶり!)。

それによると、「PRとは組織とそれを取り巻く社会の間に相互互恵的な関係を築くための戦略的コミュニケーションプロセス」ということです。
ちなみに、日本の業界団体PRSJ(日本パブリックリレーションズ協会)のウェブサイトでは、「組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団・社会)との望ましい関係をつくり出すための考え方および行動のあり方」と紹介されています。

要するに、PRとはどちらかが一方的に情報を伝達あるいは発信することではなく、相互に対話(コミュニケーション)してこそはじめてPRと認識されるということです。

手

(2)Resposibility

とくにこの数年、コンプライアンス(法令遵守)、アカウンタビリティ(説明責任)、ガバナンス(企業統治)など、企業活動をCorporate Social Resposibility(CSR:企業による社会的責任)という言葉で広く一般でも知られるようになりました。

こうしたCSR活動の推進は、企業活動の義務(責務)からもはや経営戦略やマジメントに組み込まれ、持続的で長期的に取り組むことが常識の時代になっているということです。

先にも述べましたが、ここのところ国内企業それも大手の信用と伝統を築いてきた企業の社会的責任を問われるような不祥事が相次いで発覚し、たんに残念に感じる以上にかつてあれだけ高品質で世界の信頼を得てきた、その日本企業の崩壊を目の当たりにして嘆いている人たちもいます。
こうしたニュースは世界を駆け巡り、かつてはその品質で世界の評判と信頼を得てきた日本にとって看過できない大きな問題です。

しかも長年にわたり常態化していて、発覚後もそうした状況が改善されていなかったことまでが報道されています。個人の問題というより組織ぐるみで慣習化していたことが一層深刻なこととなっています。
信頼・信用を築くには時間を要しますが、失うときは些細なことでも一瞬です。

ところで、5年ほど前、『なぜ人と組織は変われないのか〜ハーバード流自己変革の理論と実践』(2013年:英治出版)という本が随分と話題になりました。

同書は、企業が人材開発や育成、イノベーションなどに大きな投資をしているにもかかわらず「なぜ変われないのか」という難問を、米国の教育学・発達心理学者(ロバート・キーガン/リサ・ラスコウ・レイヒー)が30年ちかく研究し、それはイノベーションを阻害するメンタルな要因「免疫機能」の作用があることを指摘し、またその解決策について著した本でした。

ちょうど、作用・反作用があるように変化と防御という相反する心理が、人間には避けがたいほどにどうしても働くからです。
なにがしかの変革を成し遂げるような人は、だからこそ歴史上にもその名を残してもいるわけです。
先日紹介したクリステンセン教授の『ジョブ理論』、ムーアの『ゾーンマネジメント』でも同じようなことが語られています。

なお、このResponsibilityにとくに関心のある人は、フィリップ・コトラーとナンシー・リー共著『社会的責任のマーケティング』(原題Corporate Social Responsibility〜Doing the Most Good for Your Company and Your Cause:東洋経済新報社2007年刊)という良い本があります。実務家向けに書かれており、米国の豊富な事例で具体的にわかりやすい内容なのであわせて一読されることをおすすめします。

腕を広げるビジネスマン

(3)Reputation

誰もがソーシャルメディアで情報発信する今日では、企業はつねに評判(評価・風聞など)にさらされています。そうした評判は、それが良いことであれ悪いことであれまたたくまにオンラインを駆け巡ります。

そうした評判や風聞には根拠のないものもありますし、推奨者、批判者など様々な人たちが存在します。
近年ではクレーマーといわれる人たちが存在し、かつてはそれほどいなかったと指摘する人もいます。しかし、それは違うように思います。メディアが限定されていた時代、そうしたネガティブな情報が報道(表沙汰になる)されることは、かつてであれば少なかったというだけです。お客様相談室(コールセンター)には届いても、それらがいちいちメディアで取り上げられるようなことが控えられていたからでしょう。

それが誰でもメディアで情報発信できるソーシャルメディア時代になり、個人でも不満や問題点があれば指摘し、ソーシャルメディア上ですぐに共有されてしまう社会になっただけだと私は考えています。

コーズ・リレイテッドマーケティング(Cause-related marketingあるいはコーズマーケティング=Cause marketing)という言葉があります。
これは、商品やサービスを消費者に提供する企業が、営利活動と社会貢献活動という両輪で社会環境の向上と企業収益を両立させようという考え方です。
社会(消費者やコミュニティ)に良い評判を醸成することで、企業価値(信頼やブランド力など)を高めるコミュニケーション戦略です。

また、「ソートリーダーシップ(thought leadership)」というのも、最近では耳にしているでしょう。
これは、特定の課題について将来を見据えたテーマや課題の解決策などを表明(提案)し、人々に気づきや議論を巻き起こすというコミュニケーション活動で、そこで人々を巻き込んでリーダーシップを発揮していく人または企業が「ソートリーダー(thought leader)」と呼ばれます。この活動を推進していくことが「ソートリーダーシップ」と呼ばれるものです。

上記の2つの考え方は、社会において企業の評判を醸成するコミュニケーション施策として、現在の米国では重要なPR戦略となっています。

今日、良きにつけ悪しきにつけ、企業活動は様々な目にさらされています。嘘や隠蔽もいずれはどこかでほころびるものです。評判が落ちれば社会的な信用を失墜し株価にも影響します。また、グローバル企業であれば世界中から訴訟を起こされ、その企業が存続不可能な状況に至ります。

まとめ

コミュニケーション活動には様々なツールやコンテンツが求められています。そうしたものも「Reduce(無駄を減らす)、Reuse(再使用)、Recycle(再生利用)」しましょう。
すなわち、無駄にツールやコンテンツを増やしたり(乱発)せず、上手く繰り返し使い回し(例:社内報の掲載情報を一般向けに公開するなど)、表現や書き方(例:専門的な内容など)を変えて一般の人でも(顧客に合わせて)理解しやすくするなど再利用する。
こうしたことで、手間やコストなども削減できるでしょう。なにごとも、着眼・着想や創意工夫が大事ですね。