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21世紀的「一身二生」時代のキャリア論——知る、覚える、そして学ぶ(前編)

ここ数年、「5月病」という言葉を以前ほど目や耳にしなくなったと思っていたら、現在では「6月病」というのがあるようです。
その医師によれば、「5月病」は急性疾患ですが「6月病」は慢性疾患だとのこと。

ところで、最近になってDODAに掲載されている「キャリアの8割は偶然? キャリアプランに役立つ「計画された偶発性理論」とは」という記事を読む機会がありました。
そこで、スタンフォード大学教授のジョン・D・クランボルツ教授による「計画された偶発性理論」というキャリアに関する考え方(理論)があることを、恥ずかしながら初めて知りました。

さて、新年度3ヶ月が過ぎ、新入社会人の多い時期ということもあるので、今回はマーケティングコミュニケーションとは直接関係がありませんが、「今」という変化とスピードの激しい時代、なかでも若い人たちまたは仕事において脂がのりきっている30代のこれからのキャリア形成や自分の成長のためにはなにが必要なのか、あらためて考えてみることで、みなさまになにがしか役立つヒントとなることがあればと思い、記事にすることにしました。

それというのも、就活(転職)時期、毎年発表されるいわゆる「人気企業ランキング」を目にすると、古色蒼然として代わり映えのしない企業名が多く、およそ21世紀の今日とは思えないほどです。
20世紀とは大きく違った発想や視点が必要なのにもかかわらず、とくに就活時に繰り返される相変わらずの光景を眺めていると、一体いつの時代のことなのかと思うからです。

今日、かつてのように大(有名)企業の門をくぐって眼前にしかれたレールの上を走っていれば、それで安泰は約束された高度経済成長時代と同じような安定した社会ではありません。

ビジネスパーソンは、福沢諭吉が『文明論之概略』(岩波文庫)で語った「あたかも一身(いっしん)にして二生(にしょう)を経(ふ)るが如く、一人(ひとりに)にして両身(りょうしん)あるが如し。」という状況に生きているのです。

「計画された偶発性理論」の考え方とは

望遠鏡を覗く男性

上記のクランボルツ教授には、『その幸運は偶然ではないんです!』(2005年:ダイヤモンド社)という著書(私はいわゆる自己啓発に類する本は読まないので未読)があり、サイトで紹介されていることから判断すると、私自身のキャリアを振り返ると無意識的にどうもその考え方に沿っていたように印象を受けるのです。

みなさんの中には、とっくに知っているし同書もすでに読んでいるあるいはそれに基づいて実践しているという方々もいるかと思います。
同書はよく知られているらしく、ネットで検索すると「「キャリアは計画出来る」という誤解を解く、新しい時代のキャリアの考え方(「その幸運は偶然ではないんです!」)」をはじめとして数多くの記事が見つかります。

さて、この理論は、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」、さらには「その偶発的なことを計画的に導くことでキャリアアップをしていくべき」という考え方を基本としています。

前者については、私のこれまでの人生を振り返ると、仕事のキャリアではまさに偶然や奇遇が重なって今日に至っているという事実があり、私自身の経験からもまったくその通りだと実感しています。
しかし、後者についてはそうした偶発性を“計画的に導く”ことができるという考え方に少し驚きました。

そもそも、私が20代のころ、現在の仕事などは想像すらしていませんでした。もちろん、そのころはインターネットもブログや各種ソーシャルメディア、スマートフォンもなかった時代なので当然です。
また、このブログメディアに書評やエッセイを連載するようになるとは、1年前には私自身も想像すらしていませんでした。これも、「予想しない偶発的なこと」なのです。

そうしたことについて一度だけ、「セレンディピティ、キャリアのピボット、またはレイヤーとしての人付き合いについて考えてみた」と題するブログを書いたことがあります。ご興味のある方は、あわせご笑覧願えれば嬉しく思います。

日本は、欧米社会に比べて人材の流動性が極めて低いことが指摘されています。クランボルツの理論は、未来の目標を明確に定めておきながらも現在のおかれている状況(仕事)においてベストを尽くす心構え(意識)とその重要性とが説かれているようです。

さて、クランボルツ教授の基本となる考え方(計画的偶発性理論)には、以下の5つの要素があります。

(1)「好奇心」
(2)「持続性」
(3)「楽観性」
(4)「柔軟性」
(5)「冒険心」

上記の中で、私自身の経験から判断して(1)と(4)が、ビジネスキャリアだけに限らず、あらゆることについてもっとも重要だと確信しています。また、それらに基づく探究心がともなうことも忘れてはなりません。

好奇心と探究心、柔軟性こそ、私にとって人生でもっとも失いたくない精神ですし、これまでにもブログ(個人ブログ、ITメディアマーケティングブログ)の様々な記事中でも繰り返し述べてきました。

「好奇心忘るるべからず」ということ

付箋を見る男性

人は、日常の仕事(業務)に忙殺されていると、最初のころに持っていた志やその仕事を始めた理由(いわゆる初心ですね)が意識から薄れていきます。
一言に好奇心といっても、人間というのは若い頃にもっていた好奇心が、加齢とともに無意識のうちに徐々に失われていきますし柔軟性も同様で、意識(努力)しているか否かに関わらず、それはある意味ではどうしても避けられないことです。

しかし、この気まぐれな好奇心と上手に付き合っていくことこそ肝要なのです。そうしたことはまわりや他人からみれば、ある意味ではオタク的なことがあるかもしれません。
そうした姿勢が、いつどこで本人も予期していなかったことに役立つかはわかりません。
加えて、今日では誰でもそうしたことについて情報発信できる時代です、いつどこで様々な人の目に触れるのかは予想できません。

そうした好奇心や探究心が、仕事はもとよりそれ以外にも役立つことを可能にしている事例は「GEEKなわたしたちのPR方法ーーオタク的精神やアンバサダーたちが企業に貢献する時代」でも語りました。

みなさんは、好奇心をおもちでしょうか。それはなにに対してでしょうか。
柔軟性は、多様性とも関係がありますのでこれも重要です。残りの3つ(持続性/楽観性」/冒険心)は、好奇心と柔軟性を保っていれば自ずと一緒に維持されるだろうと、私自身は判断しています。

当ブログを読んでいるみなさんのほとんどは、主にPRやマーケティングコミュニケーション業務に従事しているのだろうと思います。
それは、大企業からベンチャーまで企業規模の大小にかかわらず、また組織内のPR担当者あるいはPR代理店などでPR業務を担当していて、業務を始めて日の浅い新人から数年のキャリアまでいることでしょう。

そうした中には、現状をステップにしてさらに上(目的)に近づこうとしている人がいるかもしれません。

ところで、私はさまざまに参加する集まりで、若い人たちからスキルアップやキャリア形成について相談をうけることもあります。とくにベンチャーやスタートアップの集まりでは学生やインターンが多く、そうしたほとんどの人たちにとって就活問題は依然として切実かつ重大な悩みです。

自分でも本当は何をしたいのかわからないという学生たちには、「それが普通なのだから、心配することないですよ」と私は答えています。

先日、「1日インターン7割増 学生との接触増やす」というニュースを読みました、今日では、学生時代にはインターンシップを採用する企業が増えています。
これ自体、学生にとってとても良い傾向です。それというのも、欧米の人たちから見ると、日本の学生は社会との接点が薄く、さらには幼すぎるという印象があるようでそれについては批判もあるからです。

しかし、このインターンシップにも問題もあるようで、学業に熱心な学生たちには「学業がおろそかになる懸念」があり、加えてたった1日でなにを得られるというのかは疑問ではあります。

まず、「業界」に足をかける

STARTライン

人は、希望していた職種についてから初めて気づきや発見を得ることもあるし、望んでいなかった仕事(業界や職種)についたとしても、仕事をしているうちにその面白さに目覚め、さらには意義や価値を感じるようになり、やがて望まなかった仕事に使命感すら感じるようになるかもしれないのです。
そうした仕事を通じ、たんなるビジネススキルだけではなく人間的にも大きく成長していきます。

今日では大企業といえども決して安泰ではありませんし、そうした組織に勤めていてもベンチャーに転職したり独立する人は多い状況です。
大企業に就職したのであれば、数年で転職するというのはまれでしょうが、私がかかわってきたベンチャー業界では2年もすると別の会社に転職したり、自分で起業するなど人材の流動化が著しいものです。

人生は、思わぬことの連続です。学校卒業後、希望していない企業あるいは職種に就職が叶わなかった人たちの方が圧倒的に多いのです。
また、一旦は希望していた企業や職業に就いてはみたものの、想像とは違っていたり数年後には再び本当は自分がなにをしたいのかとまどったり悩んでいる人も実に多くいます。

知る、覚える、そして学ぶこと

疑問

今日、書店に出向けばどの分野についても多くの情報が棚に並んでいますが、それがどのような仕事や業務であれ、最初は知ることや覚えることばかりで、嫌でもあるいは無意識的にでも業務内容については詳しくなります。

自分の担当する業務について、初めてついた職種でそれが興味のなかった仕事だとしても1年もあればほとんどのことは身につきますし、同じ業種や職種の転職者であれば組織によって多少は馴染むまでの時間に違いはありますが、2〜3ヶ月で仕事の進め方や組織に適応できるでしょう。

現在PR業務についているみなさんも、希望職種であっても希望していた企業ではなかったまたは業務内容が思っていたことと違っていたなどあるかもしれません。
問題は、希望通りの企業や業種に就職できたか否かにかかわらずそれからです。
最初にすべきことは、自分が仕事にしたいと思っている業界や業種にまずは足をかけ、キャリアをスタートすることが重要だと経験的には判断しています。

そもそも、私自身にとってネットビジネスへの転機となったのは、広告代理店のプロジェクトで一緒に仕事をした人、以後、電子書籍企業へは20年来の友人の紹介、3D仮想技術企業へは10数年ぶりに友人との再会、PR企業の新規事業(ソーシャルメディア)への参加はかつての外資系広告代理店で仕事をした人と街で偶然にも出くわしたというように、いずれも縁やつながりが転機となりそのつどありがたくも請われるままに転職してきました。

一貫性がないと思われるかも知れませんが、常に新しいビジネスを志向していること、その新しい環境でのマーケティングコミュニケーションへのつきない好奇心からです。それらの選択が正しかったのか否かという価値判断は、もちろん別の話しではありますが。
そうした経験から感じることは、主体的に学ぶという心構えと人付き合いの大切さです。

後編では、ビジネスパーソンとしてどのように過ごせばよいのか。それについて私の経験から学んだこと、考え方について述べます。

(続く)

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梅下 武彦
コミュニケーションアーキテクト(Marketing Special Agent)兼ブロガー。マーケティングコミュニケーション領域のアドバイザーとして活動をする一方、主にスタートアップ支援を行いつつSocialmediactivisとして活動中。広告代理店の“傭兵マーケッター”として、さまざまなマーケティングコミュニケーション業務を手がける。21世紀、検索エンジン、電子書籍、3D仮想世界など、ベンチャーやスタートアップのマーケティング責任者を歴任。特に、BtoCビジネスの企画業務全般(事業開発、マーケティング、広告・宣伝、広報、プロモーション等)に携わる。この間、02年ブログ、004年のSNS、05年のWeb2.0、06年の3D仮想空間など、ネットビジネス大きな変化の中で、常にさまざまなベンチャー企業のマーケティングコミュニケーションに携わってきた。