AIで文章を書くことが当たり前になり、プレスリリース制作にもAIを活用する企業が増えています。
しかし、実際にAIに任せてみると「構成は整っているのに刺さらない」「ニュース性が伝わらない」という違和感を覚える方も多いのではないでしょうか。AIは「書く」ことは得意ですが、「響かせる」ためには未だプロの視点が欠かせません。
本記事では、広報の現場で実際にプレスリリースをどこまでAIに任せることができるのか、AIを使いこなすための具体的なプロンプト、文章生成のコツ、注意点までを解説します。
この記事でわかること
・プレスリリース制作における効果的なAI活用方法
・広報のプロが実践するAI活用フロー
・成果につながるプロンプトの例
・AIの文章であることがバレる理由と、それを回避する方法
AIが作成した文章をそのまま使えない理由

AIは大量の文章を速く作成することができるため、プレスリリースの下書き作成においては非常に有用です。しかし、生成された文章をそのまま使用すると、メディアの反応が鈍かったり、誤解を生んだりするリスクがあります。
なぜなら、AIは整った文章は出力するものの、肝心のニュースバリューや切り口が曖昧で、広報の目的を果たせないことが多いためです。
ここでは、AIが作成した文章をそのまま使うことができない3つの理由を解説します。
①広報戦略の「文脈理解」が弱い
AIは入力された情報から自然な文章を生成することは得意です。しかし、「なぜ」「その人に」「今」伝えるのかという広報戦略の文脈までは理解していません。
プレスリリースは単なる文章ではなく、「世の中に新しい事実を伝えるレポート」であり、事実を報道の形式に落とし込む必要があります。
そのため、事業と社会課題との関連や競合との違い、なぜ今発表するのかという意図を理解していないAIには、広報戦略を組み込んだ文章を作成することも厳しいでしょう。
関連記事:メディアに刺さるニュースバリュー:ニュースバリューの高め方を解説
②記事化される切り口の発見は人の役割
プレスリリースが記事化されるには、文章の切り口が非常に重要です。
数字の打ち出し方や社会課題との接点、新規性・意外性といった「記者が反応するポイント」を見抜くには、業界理解や広報経験が欠かせません。
広報担当者やPRエージェンシーは、過去の経験や成功・失敗事例を活かして、最も効果的な切り口を設計します。しかしAIにはこの視点がなく、平均的・一般的な内容になってしまうのです。
③PRの観点からは非常に重要な点が欠けている
AIが生成する文章には、以下の3つが欠けていることが多いです。
・信頼性のあるデータ
AIはデータを創作してしまうことがあるため、数字は必ず裏取りが必要です。
・一貫したストーリー設計
主語が曖昧になる、論理が飛躍するなど、読み手に誤解を与えるおそれがあります。
・ターゲットメディアに合わせた調整
経済系メディアとライフスタイルメディアでは刺さるポイントが異なりますが、AIはそれを踏まえた書き換えが得意ではありません。
そのため、AIの文章をそのまま使うのではなく、素材として人間が編集するプロセスが不可欠なのです。
AIをプレスリリースに活用する4つのステップ

AIを使いこなすうえで重要なのは、AIに丸投げするのではなく、人がしっかり設計した上で活用することです。
ここでは、広報のプロが現場で実践しているフローを紹介します。
Step 1:構成と切り口は人が設計する
プレスリリースの構成は「5W1H」やニュースバリュー、ターゲットを踏まえて設計する必要があります。
特に以下のポイントを事前に決めておくと、AIの出力精度が大きく向上します。
・ターゲットメディア(例:経済系、テック系、地域メディア)
・説明すべき事実とその背景
・記者に伝えたい数字・成果
・結論
こうした骨組みはAIには作れないため、構成そのものを人が設計することが必須です。
Step 2:部分的にAIを活用して文章を作成する
文章化のフェーズでは、AIの力を借りることで効率が大きく上がります。
以下のような領域はAIに任せ、広報担当者の負担を軽減しましょう。
・段落ごとの草案の作成
・文法・語尾の揺れの調整
・案出し(タイトル案、導入案、FAQ案)
ただし、タイトル案のブレストには注意が必要です。
タイトルには「時事性」や「意外性」が求められますが、AIはその判断をすることが苦手です。AIには型通りの案出しを任せ、人がそれらを「刺さる内容」に調整するのがよいでしょう。
Step 3:出力内容のファクトチェックと編集
AIは整った文章を書く一方で、もっともらしい誤り(ハルシネーション)を出力することがあります。
そのため、「AIが作った文章を、必ず人間が責任を持って確認する」というルールが必要です。
特に以下は誤りが出やすいポイントのため、注意して確認しましょう。
・数値・調査データ
・固有名詞(企業名・サービス名・役職名)
・業界用語の定義
・自社特有の文言・ブランドトーン
Step 4:メディア視点で再設計
最後に、広報担当者が「記者が反応しやすい形」に調整します。
調整のポイントとしては、以下のようなものがあります。
・タイトルをニュースバリュー中心に書き換え
・数字・成果を前に出す
・導入のリード文を「社会背景 × 新規性」の形にする
・メディアの特性に合わせて言葉遣いや堅さを調整
このステップがあることで、プレスリリースが「説明文」から「報道される文章」へと変わります。
プロが本当に使えると思った「AI活用方法」5選

次に、広報のプロが実際にAIを活用しながら見つけた「本当に使えるAIの使い方」を5つ紹介します。
①構成を意識してプロンプトを渡す
AIは情報が不足すると誤解しやすく、抽象的で弱い文章を作りがちです。
特にプレスリリースは未公開情報を扱うためハルシネーションが起きやすく、プロンプトには具体的な情報を、構成のレベルで渡すことが欠かせません。
プロンプトに入れるべき要素は、以下のようなものがあります。
・誰向けのリリースか(ターゲット)
・どんな事実を発表するのか(5W1H)
・実績・数字などの根拠
・なぜ今発表するのか(背景・意義)
・章ごとに伝えたいことの指示
特に「誰に・何のために・何を・なぜ今発表するのか」をワンセットで伝えると、AIの迷いが大幅に減ります。
また、各章での意図を具体的に伝えることで、AIが構成に沿った文章を出力しやすくなります。
ポイントは、情報量を増やすことより、構成の意図を明確にすることです。これにより、AIのハルシネーション防止と、文章の精度向上が同時に実現します。
②AIに前例を学ばせる
自社の過去リリースやコーポレートサイトの情報、代表メッセージなどを読み込ませると、文章のトーン&マナーの再現度が高まります。
新任担当者でも自社らしさを取り入れた文章を作りやすくなり、担当者の力量による差も少なくなるでしょう。
また、事前に「プレスリリース発表までの文脈」を学習させることで、今回発表するニュースの位置づけも理解しやすくなり、ストーリー性のあるリリースを作りやすくなります。
③AIが得意なパートだけ任せる
プレスリリース作成において、AIと相性の良い領域は次の通りです。この部分は積極的にAIを活用しましょう。
・購入手順・利用手順の説明
・補足説明やFAQの生成
・リード文の叩き台作成
一方で、以下のような要素はAIとの相性があまりよくありません。AIに丸投げするのではなく、必ず人が関与する業務フローを定めておきましょう。
・タイトルの確定(意外性や時事性が求められるため)
・メディアが求める切り口の設定
・事実の信頼性判断
④ブランディングを守るルールを作っておく
AIに任せる前に、企業のブランドを守るルールを明確にしておくことも重要です。
プレスリリースは企業の公式な声になるため、文体や語調が曖昧なままAIに任せると、意図しない表現が入り込みやすくなります。
事前に決めておく項目としては、以下のようなものがあります。
・NGワード
・使用してよいデータの種類
・トーン&マナー(丁寧度・語尾・固有の言い回し)
・社内情報・未公開情報の取り扱いルール
AIは提示されたルールに忠実に従うため、これらを共有しておくだけでブランド毀損のリスクを大幅に減らせます。
複数の担当者がAIを使う場合は、ガイドライン化しておくことで出力の品質と統一感を保てるようにしましょう。
⑤定期的に「人」と「AI」の出力を比較・改善
AIにデータを学習させ、使い続けるほど精度は上がりますが、定期的な比較と改善は欠かせません。
表現の癖、てにをは、論理のつながり、主語の一貫性など、読み手が違和感を覚えやすい部分を重点的にチェックし、人間の編集観点と照合しながら改善していきましょう。
この作業を繰り返すことで、AIが出力する文章の精度が社内標準に近づき、修正コストも徐々に減っていきます。
AIに丸投げしたらどうなるか

では、AIに丸投げしたプレスリリースと、プロンプトを設計して部分的にAIを活用したプレスリリースを比較してみましょう。
PR視点を持たずにAIに丸投げしたプレスリリース
【プロンプト】
新サービスを発表するプレスリリースを書いてください。オンラインで使えるマーケティングツール『〇〇』です。
【プレスリリース】
タイトル:新しいオンラインマーケティングツールを提供開始しました
株式会社ABC(本社:東京都)は、新しいオンラインマーケティングツール『〇〇』の提供を開始しました。このツールは、多くの企業にとって役立つものであり、業務効率を向上させることができます。今回のサービス開始により、より多くのユーザーに価値を提供していきます。ぜひご利用ください。
本サービスは、さまざまな業界で利用することが可能であり、企業の成長をサポートします。今後もより良いサービスを提供するため、機能の拡張を予定しております。
このプレスリリースには、以下のような問題点があります。
・ニュース性が一切示されていない(何が“新しい”のかが不明)
・社会背景や「なぜ今リリースするのか」の理由がないため記事化されない
・ターゲットが曖昧(誰に向けたサービスなのか?)
・数字・根拠・特徴がない(「便利」「効率化」といった抽象的なワードのみ)
・「オンラインツール」以上の具体性がない
・企業の文体・ブランドトーンが再現されていない
・競合や代替サービスとの比較が不明
・責任者などのコメントがないため想いが伝わらない
このように、丸投げすると「文章としては成立しているが何も伝わらないリリース」になります。
PRの観点を踏まえてプロンプトを設計した場合
【プロンプト】
以下の情報に基づき、プレスリリースを作成してください。
・ターゲット:中堅企業のマーケティング担当者
・発表内容:AI分析型マーケティングダッシュボード『〇〇』を×月×日に正式リリース
・特徴:①広告データとSNSデータを自動統合、②月30時間分の分析作業を削減、③競合比較機能を搭載
・なぜ今:各社がデータ分析の人員不足に直面しているため
・実績:β版を20社が導入、平均CPAが18%改善
・伝えたい軸:ニュース性(業務効率化×AI分析精度)、社会背景、実績、差別化ポイント
・文体:フォーマル、簡潔、記者が読みやすい構成
・構成:タイトル → リード → 背景 → サービス概要 → 特長 → コメント → 今後の展望
以上を踏まえ、記者が記事化できるレベルの情報量と切り口で作成してください。
【プレスリリース(一部)】
タイトル:AIが分析業務を自動化。広告・SNSデータを統合する解析ダッシュボード「〇〇」 ×月×日にリリース
株式会社ABC(本社:東京都/代表取締役・山田)は、広告データとSNSデータをAIが自動で統合・解析するマーケティングダッシュボード「〇〇」を×月×日に正式にリリースします。β版導入企業20社において平均CPAが18%改善したことを受け、データ分析の人員不足に悩む中堅企業を中心に提供を拡大します。
近年、マーケティング部門では広告運用・SNS運用のデータが分断され、分析担当者の負荷が増加しています。「〇〇」はこれらを自動で統合し、月30時間分の手作業を削減。さらに競合比較機能を標準搭載し、意思決定スピードの向上に貢献します。
代表の山田は「データ分析の属人化が進む中、AIを活用することで企業に“第二の分析担当者”を提供したい」とコメントしています。
今後は各業界別に最適化した分析テンプレートを追加し、より幅広い業種のマーケティング支援を強化する予定です。
※機能がわかる一覧表やイメージ写真を添付
【改善したポイント】
・誰に向けてのサービスかが明確
・発表理由(市場背景)が示されニュース性が高まった
・実績・数字が入り信頼性が向上
・サービスの特徴が具体的で差別化や比較が容易
・代表のコメントにより、企業の意図や想いが伝わる
これにより、記者が記事化の可否を判断できるプレスリリースになっています。
プレスリリース作成にAIを導入する際の注意点

AI活用で最も重要なのは「リスクを理解した上で使うこと」です。
プレスリリースは企業の公式情報であり、誤りや情報漏洩は信用問題に直結するため、慎重な運用が欠かせません。
ここでは、プレスリリース作成においてAIを導入する際に注意すべき、4つのポイントを解説します。
①機密情報は入力しない
AIツールによっては入力した情報を学習に利用するものがあります。
プレスリリース制作では未発表情報を扱うため、以下の点に注意して機密情報を管理することが必須です。
・未公開情報を入力しない
・仮名・一部伏せ字を使う
・社内専用LLMの活用を検討する
セキュリティ対策を怠ると情報漏洩につながる可能性があり、特に新規事業や人事情報が外部に出ると重大な影響を及ぼします。
②生成された文章をそのまま使わない
AI文章は自然に見えても、曖昧な表現や重複表現、ハルシネーション(もっともらしい嘘)が入り込みやすいです。
AI文章はあくまでたたき台であり、広報担当者が必ず修正する前提で使うようにしましょう。特に数字や固有名詞は必ず人が裏取りを行い、事実と齟齬がないか確認する必要があります。
③メディアが求める構成・切り口を外さない
AIはニュースバリューの判断が苦手です。「なぜ今なのか」「他社と何が違うのか」といった「広報の本質部分」は、人が設計する必要があります。
AIが生成したプレスリリースが刺さらないケースでは、社会背景との接続が弱かったり、新規性が曖昧だったり、事実をただ並べただけで物語性が欠けていたりと、記者の関心を引く切り口が不足していることが多く見られます。
そのため、AIが作った文章をベースにしながらも、最終的な「ニュース化」の調整は必ず人が行うようにしましょう。
記者が反応しやすい視点に書き換えることで、初めてメディア露出につながるリリースへと仕上がります。
④著作権・商標などの権利関係に注意する
AIは既存のコピーやスローガンをそのまま引用してしまうことがあり、意図せず著作権や商標を侵害するリスクがあります。生成された文章に含まれる表現は、人の目で必ずチェックし、他社権利への抵触がないかを確認する必要があります。
以下の点に注意し、必要に応じて法務部門と協力しながら安全性を担保することが重要です。
・既存のコピー・スローガン・商標が無断で含まれていないか
・専門用語・製品名・他社名の使用が正当な範囲内か
・競合他社や自社ブランドの毀損表現や法的な問題がないか
ブランドのトラブルは広報活動の信頼、ひいては企業そのものの信頼を損なうため、慎重にチェックしましょう。
危機管理広報の基礎も念のため確認しておきましょう。
失敗しないための危機管理広報マスターガイド!危機管理の基本から応用までを解説
よくある質問(FAQ)

最後に、日々PR支援を行う中でよく寄せられる質問に対する回答をまとめました。
AIで作成した文章はなぜバレるのですか?
AIは「平均値」を取りに行くため、表現のクセがなく、エッジが出にくい特徴があります。
人が面白さを感じる文章には「意外性」や「飛躍」がありますが、AIは論理的な中庸表現に寄りがちです。
AIで作成した文章だとバレるポイントは、以下のような要素です。
・同じ語尾の繰り返し
・主語の曖昧さ
・ひねりのない比喩表現
・変化が少ない段落構成
これらを人間が補正することで、AIらしさを消すことができます。
まとめ:AIで「書く」ことはできても、「響かせる」にはプロの視点が不可欠

AIの進化により、プレスリリース制作は大幅に効率化できるようになりました。
一方で、AIを活用する際には、ハルシネーションの回避、事実確認、ニュース性の設計、ブランドトーンの維持など多くの注意点があります。
また、プレスリリースには「今発表する理由」や「社会的な意義」といった文脈が欠かせないため、AI任せではどうしても限界があります。
AIはあくまで手段であり、成果につながるリリースに仕上げるには、人の判断や編集が不可欠です。
とはいえ、AI活用戦略からプレスリリース作成、その後のメディアアプローチまでをすべて自社で最適化することは難しいでしょう。だからこそ、必要な部分は専門家と併走しながら、無理なく発信の質を高めることが大切です。
シェイプウィンでは、AIを活用したプレスリリース作成に加え、SNS・SEO・PRを横断した総合的なサポートを提供しています。まずは現在のお悩みや課題の整理からでも、お気軽にご相談ください。
